「いやあ〜お嬢様の小さい頃の服が残っていて良かったです。サイズもぴったりですね」
「……」
にっこにこと笑顔のルカに冷めた表情を向け、私は今着ているフリルのスカートをひらっと少し持ち上げた
「……ふりるおおすぎじゃない?これ」
「そんなことないですよ。普通です」
「るかがつくったんでしょ?このわんぴーす。なら、るかのしゅみじゃん。これをふつーとはいわないよ」
世の中の子供服はもっとラフで可愛いのがあるのに…と文句を溢せば、「ワガママ言わないでください。確かにポプリはお嬢様と違ってこういうフリルのワンピースが似合いませんけど…」と返された。うっさい余計なお世話
「でも他に着れる服もないですし、仕方ないでしょう?薬の効力がきれる今日1日、あんなダボダボの服着てるわけにもいかないですし…」
「むう…」
…確かに。この幼児化を促す薬はジョーリィの完成品ではなく欠陥品だったらしく。すぐに効力は切れるそうなのだが…思ったより幼児の姿だと生活が不便過ぎて辛い。まさか着るものすら困るなんて
「まったく…れんきんじゅつしは、ろくなことしないなあ」
「あはは…小さなポプリは相変わらず毒舌ですね」
「そうやって怒るときにぷくーっと頬が膨れたり、舌っ足らずで愚痴を言う姿は小さい子どもそのものに…」と呟き、ルカは勝手にため息をついていた。うっさいなー何を期待してたんだ、このロリコン
「ジョーリィの実験室から小さくなったポプリが泣きながら飛び出してきた時は驚きましたけど…まだ他の皆さんは知らないんですか?ポプリが幼児化したこと」
「ん?ぱーぱとまんまにはいったよ。きょーはしごとできませんって」
「!…ふふっ相変わらずポプリはそういうところは真面目ですね」
「へっ?」
「偉いですね。パーパ達に真っ先に報告してくるなんて」と微笑み、何故かルカは私の頭をよしよしと撫でる。…ルカ、あの、私中身はちゃんと大人だから。あんま子ども扱いしないでくれますかね?
「あーもうやめてよっかみのけがぐちゃぐちゃになる…!」
「そしたら私が梳かしてあげますよ」
「うっさいにやにやすんな、るかのへんたい」
「へ、変態って…!」
「もーいいもん。わたしちょっと、まーさのところにいってくる」
「?マーサのところに?」
「ひとりでしごとおしつけることになるかもだから。まーさにもちゃんとじじょーをせつめいしてくる」
私はソファーからぴょんと降り、ルカに履かせてもらった真っ白な靴で歩いてみる。…が、すぐに問題発生。ドアのノブに手が届かないのだ。…嫌だなさっそく不便だ。若干泣きそうな気持ちを静め、私はぴょんぴょんとドアの前で跳び跳ねた
「うー…もう、ちょい…!」
カチャ、
「!あ…」
「はい。どうぞ、ポプリ」
ニコニコと笑顔のルカはいつもお嬢様にするみたいに先に立って、ドアを開けて待ってくれた。…フェリチータお嬢様も毎日こうやってルカにエスコートしてもらつてるのかな。なんか、幼なじみのルカにこんなことされるなんて、ちょっとむず痒い。「あ、ありがとう…」とお礼を言うも、すぐさまに私の目の前に手を差し伸べたルカに私は首を傾げた
「ルカ…?」
「…小さな子どもには、ただ歩き回るだけでもちょっとした冒険なんですよ?常に危険と隣り合わせですから」
「…?そうなの?」
「はい。昔お嬢様も館内でよく転んだり、どこかにぶつけたりしてしまってました。ですから、ほら。ここからは私と手を繋いで行きましょう?」
「………」
…なんかルカ、さっきからおかしくない?頬とか緩みっぱなしだし。んー…まあ確かにルカが子ども好きなのは知ってるけど。ピッコリーノの祭典も協会で子ども達と楽しそうに遊んでたし
「……るかはやっぱり」
「?はい?」
「ろりこんだね」
「!?」
私はルカが何か反論する前にぱっと彼の手を掴み、「でも、るかのそういうやさしいところ。わたしすきだよ」と微笑む。…ルカの優しさが、こうして異常事態に陥った私には心強いのだから。やっぱり、ルカはいざという時に一番頼りになる。それは昔から変わらない。昔から私やデビトやパーチェにとって、ルカは頼れるお兄ちゃんなのだ
「…やっぱり子どもの純粋な笑顔は凶器ですねえ」
「ほ?」
「いえ、不覚にも今ポプリのこと可愛いと思ってしまいました。…ポプリも小さい頃は今みたいに純粋だったのに、全くいつからひねくれて育って…」
ゲシッ
「痛!ポプリ!蹴らないでください…!」
「うっさい。るかのばーか」
−−−−−−
検証1 ルカは幼女にはデレデレ
←∴→
戻る