「デビトってポプリをからかうだけで本気で口説こうとしたりはしないよね」
「……はあ?」

いきなり言われた一言につい眉をひそめてしまう。…いきなり何言ってんだ?パーチェのやつ。それは隣に座っていたルカも同じだったらしく、「どうしたんですか?急に」なんて首を傾げていた

「いや棍棒の部下達が話しててさーポプリって人気者なんだね」
「?どういうことですかパーチェ」
「うーんと…なんというか、お嬢はそれこそ俺達ファミリーのマドンナ的存在じゃない?でもポプリはなんというか幹部でもないし、手に届きそうだーとかなんとか。料理も上手で優しくて良い子だし割りと好みだって」
「…皆さんそう言ってたんですか?」
「本気かどうかは分からないけどねー」
「…まあバンビーナよりは手を出しやすいよなァ館の料理人って立場じゃ」
「それで、棍棒の方々は何と?」
「告白してみよっかなあーって」
「こっ…告白!?」

ガタッと席を立ち顔を赤くするルカに、パーチェが「付き合えたらいいなーぐらいの気持ちなんじゃないかな?ほら、レガーロ男は何事も前向きだから」と何でもないように笑う。…告白、ねえ。なんだポプリのやつ、ここに来てモテ期到来ってか?ま、ファミリーのやつはほとんど独身だしな。職業柄、女とあんま関わらねーしあり得ない話じゃないか…

「あ、そうだ。ルカちゃん」
「何ですか?パーチェ」
「ルカちゃんはポプリのことどう思う?」
「!?い、いきなり何ですかその質問!」
「だーって、あまりに棍棒の部下達に聞かれたからさー」
「えっ?」
「ずっと昔から近くにいてポプリを親方は意識したりしないんですかー?って。羨ましいとも言われた」
「……」
「俺はポプリとずっと幼なじみみたいなもんだったし、そういうの意識したことなかったなーって答えたけどね」
「…私もそんなところ、ですかね。気のおける友人として接してきましたし、あまり女性として意識する機会もなかったような…」
「あ、ルカちゃんも?だよねだよね。もちろんポプリのことはすごく好きだし大切だけど」

『ー…デビトはどう思う?ポプリのこと』

そう何気なく問いかけられた言葉に、俺はつい黙りこくり酒を一杯喉に流しこんだ。…どう思ってるか?ポプリを?どうってそりゃ…ポプリは俺にいちいち喧嘩売ってくるようなガキで。俺がからかうとそれを本気にするようなバカ正直なやつで。他のシニョリーナ達みたいなおしとやかさとか可愛げとか愛嬌とかは一切なくて

『ー…デビトっ』

…けど、アイツは誰よりも優しくて真っ直ぐなやつだって知ってる。そりゃ時々口やかましいけど…、嫌いなんかじゃねェ。顔だってまあ…アレだ。まあまあなほうだろ。美人って感じじゃねーけど

「?デビト?どしたのボーッとして」
「……何でもねェよ。ポプリがそれこそもっとおしとやかで愛嬌があれば、俺達も意識したかもしれねーのにって一瞬思っただけさ」
「あ〜…ポプリは昔から俺達と一緒に色んなことしたからなあ。女の子、って感じのポジションじゃなかったよね四人のなかで」
「それこそ小さい頃は私がポプリにもっと女らしくしなさいと注意してたぐらいですからね…」
「女の子らしくなくて悪かったね」
「「「!!」」」

突然聞こえてきた高いソプラノ声に振り向けば、そこにはむっと不機嫌そうな顔をするポプリの姿が。「ポプリ…!いつからそこに…!」なんて焦ったように言葉を紡ぐパーチェに、ポプリはじろりと睨み返す

「デビトはポプリのこと、どう思う?の辺りから」
「い、いたなら言ってくれれば良かったのに!盗み聞きなんて趣味悪…」
「ひそひそ男三人で私の悪口話してるほうが趣味悪いでしょ!何なのもう本当最低!」
「ご、誤解ですよ…!なにも私たちは悪口なんて…」
「女の子らしくないだ、女として意識したことないだ、無神経な言葉ばっかよくもまァ男三人で揃いも揃ってえ…!」
「あ、あのポプリ…?ちょ、ちょっと落ちつ…」
「問答無用!もういい、今日から1週間朝ごんも昼ご飯も夜ご飯も三人の食事は用意してあげない!」
「えええ!?い、嫌だよポプリそんなの!ポプリの美味しい料理食べられなくなるのなんて!」
「ふんっ館では料理振る舞ってあげないから1週間は外食でも何でも勝手にしなさいよ。マーサさんにもフェリチータお嬢様にも言っておくから」
「お、お嬢様にもですか!?」
「お嬢様がルカに手作りドルチェを振るまうことはこの1週間ないからね!どーだ!」
「そ、そんなあ…!」
「……」

ー…ま、こいつ自身がこんな感じじゃ暫くは無理だろうな。棍棒のセリエの連中がポプリに告白でも何しても構いやしねーが、あんまりお薦めは出来ねーよ。こんな女らしさの欠片もない凶暴女

「?…なに笑ってんのよデビト」
「いんや?ポプリがそんなに俺らに愛でられたかったなんて思わなかったってだけさ。そうだよなァ、シニョリーナは愛でられないとその美しさは萎れちまうもんなァ」
「!ちっ…違う違う!そんなんじゃないし!べっつに私だってパーチェやルカやデビトに女の子として扱われようだなんて思ってないもんね!!」

真っ赤な顔でよくわからない捨て台詞を吐き、「もう本当にパーチェもルカもデビトも知らないから!」と部屋を飛び出したポプリ。…意味分からねェ。何だよポプリのやつ、俺達三人の前じゃこんなぞんざいな扱いしかされねーに決まってんだろ。なんたって幼なじみなんだから

「うわーん!どうしようデビトー!ポプリが料理作ってくれないって!」
「そのうえあの言いぶりだとポプリはマーサやお嬢様にまでそれを協力してもらう気みたいですし!ど、どうしましょう…!」
「あーなんだよてめえら二人揃って同じこと言いやがって…元はと言えばパーチェが悪いんだろーが」
「だって〜!」
「ったく…仕方ねェな…。ほら、さっさと行くぞ」
「?行くって…どこにです?」
「決まってんだろ?お怒りのお姫さまのご機嫌を取りにいくんだよ」

昔から俺やパーチェやルカが悪ノリしてポプリを怒らせた時には、三人してポプリのところに「さっきは悪かったな。」なんて頭を下げに行ってた。中庭のベンチで1人拗ねてるアイツのところに。そして俺らがそんな言葉を掛ければ、「……許してやらないことも、ない」なんてポプリは決まって可愛げもなくそう返事をする。ー…その決まった手順がなければ、俺ら幼なじみの喧嘩は終わらない。まあ逆に言えば…昔からそんなもんだ、俺らの喧嘩なんてもんは


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やっぱ男3女1でつるんでちゃ、ヒロインさんはこんな扱いしかされず。笑



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