April.15_14:39


「どうしましたか?」
「あ…あの男にカバンを引ったくられて…」


悲鳴が聞こえた方に駆け付ければ、そこには1人の女性が。彼女が指差す方向には女物のバックを持って走り去る、図体の大きな男の後ろ姿があった。…あれは普通に物盗り、なのかな?やけにキンキラな金髪が気になるけど


「あ、あの金髪は…」
「銀ちゃん、きっとあれヨ!姉御が言ってた引ったくりっていうのは」
「?何か知ってるんですか?」


狼狽える女性に「大丈夫です、とりあえずここで待っていて下さい」と言い残し、私達は足を急がせた。坂田さん、新八くん、神楽さん、私、沖田隊長で逃げた男を追う


「知ってるつーか…俺らある女から"私の荷物引ったくった金髪馬鹿、私のとこまで連れて来いや"っていうムチャクチャな依頼受けててよ…奇しくもそれがアイツらしいってわけ」
「あー、そういや引ったくりの被害届が何件か屯所に来てやしたねィ」
「じゃ、じゃあその依頼人の方も金めのものを盗まれて…?」
「いえ、姉上が盗まれたのはバーゲンダッシュの入った買い物袋だけです」
「あ…そ、そうですか」


うーん、にしてもあの男をここで逃す手もないし。何とかして捕まえなくちゃなァ…。これだけ大勢で追ってれば、使う手段もたくさん…


「沖田隊長、私が裏手から行くので挟み撃ちしま…」
「オラァ!邪魔アルこのサド!アイツは私がす巻きにして、姉御に送り届けるネ!そこ退くヨロシ!」
「なーに言ってんでさァ。一般人は下がってろィ。お前の方こそ邪魔だクソチャイナ」
「あんだと!?上等だァ、表に出ろやクソガキ!」
「ちょ…神楽ちゃんに沖田さん!今はそんなことしてる場合じゃ…グフゥっ!」
「……」


…違った。大勢で追ってるからこそ、手間取るんだ。仲間割れしてる…。沖田隊長とチャイナさんの喧嘩に巻き込まれて、新八くんはもろにパンチを食らう。…ああ、新八くん可哀想。ただ止めようとしただけなのに。それでも坂田さんは慣れているのか「オーイ神楽、その辺にしとけー」なんて軽く言い放つ。(まあそれでも乱闘は止まらないけれど)…仕方ない、1人で行かせていただこう


「…坂田さん、私が先回りするのでそのまま追跡お願いします」

「あ?先回り?って…お前何してんのォォォォ!!?」


急にひょいと民家の屋根に飛び上がった私に驚いたのか、絶叫する坂田さん。他の喧嘩をやめて、三人もぎょっと目を丸くしている


「なんだ忍者かお前ェェ!」
「気合いがあれば何でも出来ますよ」
「いや無理だろ!よじ登らずにそんな高い屋根の上に登るなんて!」
「ぴょーんとジャンプすればいいんです」
「それがまず無理だろ!!」
「じゃあ沖田隊長に皆さん、後はよろしくお願いしますね」


ぐたぐた話していた間に犯人とはあんなに距離が…。うあ、マズイマズイ。随分逃げ足が速い引ったくりだ。私は沖田隊長達に手を振り、民家の屋根から屋根に飛びうつって移動を始めた






***






突然屋根の上をサササと音も立てずに走り去る茜の姿を、建物沿いに目で追う。その姿を遠目に見ながら、俺と万事屋の旦那とチャイナと新八くんで走る


「…おい、アイツ何者なんだよ」
「あー確か幕府勤めの暗殺部隊所属だとか」
「あ、暗殺部隊!?あんな女の子がですか!?」
「何でそんな得体の知れないやつがお前らのとこで研修してるアルか」
「んなの俺に聞くな。知るわけねーだろィ」


…本当に、何であんなやつが真選組に来やがったんだ。松平のとっつァんは何だってあの女を寄越したんだ?真選組は生憎人員不足でもなんでもねーんだが。双方にメリットはないのだ。そんなことをぼんやりと考えていれば、遠目にあった茜の姿はある場所でサッと姿を消した。…どうやら屋根から飛び下りたらしい


「…あそこにいるってわけか」
「そうみたいですねィ」


あのチビ女が飛び下りたその民家の角で曲がれば、そこには…


「う、動くなァっ!」


そこにはー…刃物を振り回す、先ほどの男の姿があった。普通に店やらで売っている、カッターナイフのようだ。そして、その刃の先では茜が困ったような顔を浮かべて立ち尽していた


「…オイ、この状況は何なんでさァ」
「あ、沖田隊長…。いえ、なんか観念しなさーい的なこと言ってみたら、急に刃物出してきたんですよ」
「!チッ、後ろからも…」


舌打ちをひとつして、男は後ろにいる俺達四人と前方にいる茜の奴とを見比べニヤリと笑う。…まあ考えてることは大概分かるが。この場面じゃな


「…クソがァァそこを退けェェ!!」
「!わ、」


ブンブンと男が振り回すカッターナイフを、最小限の動きだけでひょいひょいと躱す茜。男の動きなんかは完全に読めているらしい。…見事だとは思うが、それだけだ。あのチビ女は反撃すらしようとしない。何だあいつ、どうしたってんだ。早くきめちまえよ、蹴りやら拳やら


「おっ…沖田隊長!」
「なんでィ」
「あの……コ、コンタクトを落としましたアア!」
「「「「…はあ?」」」」
「ま、前が何も見えないんですけど!これ今どうなってます!?」


「いや、かなりピンチな状況にいますよ!あんた」「っていうかお前、こんな時に何やってるネ!」なんてツッコミをいれる眼鏡とチャイナに、こっそり心の中で同意した。…本当いつもどっか抜けてんなコイツは。コンタクトって


「…あ、」
「「!」」


そんな折り、後ろへと避ける茜の身体がぐらりと揺らいだ。…どうやら何かにつまづいたらしい。男はその隙を見逃さなかった


「っ…死ねェェェェ!」


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