April.14_08:29


真選組に来てから2日め。ここで迎える初めての朝は、大きな爆発音と共に始まった


「死ね土方ァァァ!!」
「お前が死ね総悟ォォォ!!」
ドゴーン!
「おはようございます、近藤局長」
「おお、茜くん。おはよう」


新しくもらった真選組の隊服。(もちろん幹部役のとは違う)それに着替えをすませ、食堂に顔を出せば、既に近藤局長含め何人かの隊士さんが食事を始めていた。仕事が早くからある人もいるのだろう


「昨日はよく眠れたかい?茜くん」
「はい、おかげ様でぐっすり眠れました」
「ハハハ、それは良かった」


皆さんと同じようにカウンターからご飯やおかずを選び、プレートに乗せる。それを持ったまま私は近藤局長の向かいの席に座った。外からものすごい爆撃音が聞こえる度、プレートの上の味噌汁がぐらりと揺れる


「…すまんなァ。朝から色々騒がしくて」
「いいえ。隊士さん達の話だと土方副長と沖田隊長、いつもああなんでしょう?」
「あ…えーとまぁ、トシと総悟は昔からの馴染みだしお互い遠慮がないというか、その…」
「?」


急にゴニョゴニョと誤魔化すように言葉を濁す局長さん。…どうやら研修生(わたし)が来ているという手前、目の前で乱闘騒ぎが起きてることを多少引け目に感じているらしい。…まあ確かに、あんまり被害が拡大するようならアレだと思うけど…


「…別に、気にしてませんよ」
「え?」
「土方副長と沖田隊長のことです。…逆にああいうの見てるとなんか微笑ましいですよ。喧嘩なんて、お互いに情がなければ成立しませんもんね」


そう微笑み返し、沢庵をポリポリと口に頬張る。うーん、美味しいなあ。私沢庵好きっ。「…土方副長と沖田隊長、昔から仲良かったんですか?」と首を傾げれば、局長さんが急にプッとさもおかしそうに吹き出した。…え?


「(もぐもぐ、)?ひょくひょーはん?」
「…アハハ。アイツら見てそんなこと言うなんて、きっと茜くんくらいのもんだよ。情があればこそ、か…なるほどなァ」
「…わはし、まひがったこと言いまひたか?」
「いや、間違ってなんかないさ。普段からあんな風にいがみ合ってるから、周りにも誤解されやすいが…実はアイツらが誰よりもお互いのことを認め合ってるんだよ」
「……なら、それを本人はんたちは気付いてないんでひょうね」
「そう!そうなんだよ!いやー本当茜くんの言うとおりだよ!」


「俺達は武州(むかし)からの仲なんだけどね、アイツらの喧嘩を止めるのはいつも俺で…」とかなんとか、局長さんは夢中で話をする。…ええと、なんかそういう昔話を聞くのは新鮮だし興味深いんですけど。局長さんあなたご飯食べながら話をしてますからですね、ご飯つぶがさっきからコッチに飛びまくってるんですけど…!全部クリティカルヒットしてるんですけど…!


「…何でィ、あんたここにいたのかィ
「!沖田隊長…」
「おお、総悟か。おはよう」
「おはようございやす、近藤さん」


食堂に姿を現した沖田隊長はこちらにツカツカと歩み寄り、何故かそのままじっと私を見下ろしてきた。?どうしたんだろ…


「あの、沖田隊長?」
「あんた、ちょいと俺に付き合ってくれやせんか」
「!んぐぐ、」


有無を言わさず急に襟ごと首元をグイグイと引っ張られ、私は茶碗と箸を持ったまま引き摺られる格好に。い…いや!何で!?


「ちょっ…沖田隊長!一体どういうつもりで…」
「あんた、幕府では暗殺なんてのを専門にしてたんでしょう?」
「?そ、そうですけど…」
「だったらその極意ってのを俺に教えてほしいんでさァ。土方コノヤロー暗殺の参考までに」
「え」
「あんたの仕事は俺のサポート…なんでしょう?当然土方コノヤロー暗殺計画にも協力してもらいやすぜ」


「土方がいる屯所(ここ)なんかじゃアレだから、ファミレスにでも行きやしょうか」とにっこりと少年めいた笑顔で言う沖田隊長に、ズルズルと引き摺られるまま、私は食堂を後にした。土方副長暗殺計画って…何ですかそれは



「……とっつァんもまた、面白い娘を寄越したもんだなァ」


そんな近藤局長の一言は私の耳に届くことはなかった。…こうして、私の真選組研修3日めが始まっていく。少しの不安を残して


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