April.13_10:30


「え―…というわけで今日から10日間だけ研修生として、俺達真選組に1人仲間が加わることになった。進藤さん、前に」
「あ、別に茜で大丈夫ですよ。松平様もそう呼んでますから」
「ああそう?じゃあ茜くん、前に出て自己紹介を…」
「ちょっと待てエエエエ!!」


真選組の朝礼の時間。正座して私と局長さんのほうを見上げる隊士さん達のなかから、いきなり怒声をあげ立ち上がったその人物。…以前松平様のところで一緒にいたのを何度か見たことがある。あれはたぶん、鬼の副長と呼ばれる男…土方十四郎だ。


「いきなりこんなガキ1人連れてきて何しだすかと思えば…研修だァ?何考えてんだ、近藤さん」
「いや、実はとっつァんからの紹介でな…。すまんトシ、もう決まったことなんだ」
「とっつァんの?…だがそれが例え上の命令でも、隊士達が認めるわけ…」
「「「「「「うおおおっ!!!とうとう真選組(おれたち)にも春が来たアアアアア!!!」」」」」」
「「…へっ?」」


土方副長と私が驚いたように声をあげた瞬間、大勢の隊士さんのワァーッとした歓声がその場に響いた。え?え?どういうこと?


「よっしゃァァ!!こんなムサイ場所ともいよいよおさらばだァァ!!
「茜さん、でしたっけ!?趣味は何ですか!?」
「彼氏はいますか!?」
「好きな男性のタイプとか何かありますかァァ!?」
「え、ええと、あの…?」
「アハハ、お前ら質問は順番になー。でないと茜くんも困っちゃうだろう?」


いえ、むしろこのテンションに困ってるんですけど…。とりあえず歓迎されてる、のかな…?私はそのまま副長さんに目で助けを求めたが、彼は呆れたようにため息をつき、くるりとこちらに背中を向けてしまった


「…もういい。近藤さん、俺は仕事に戻る」
「あ…ふ、副長さん!ちょっと待って下さい!」
「あ゛?」


ゆらりと向けられた鋭い眼光に思わずビクリとしてしまったが、何とか明るく笑顔を返す。…これからお世話になるのに挨拶なしじゃ駄目だもんね。私は深々と頭を下げた


「進藤茜です。今日から一番隊に勤務することになりました、よろしくお願いします」
「!……一番隊に?」


眉間に皺を寄せ、近藤局長の方に「そうなのか?」と睨みをきかせる土方副長。…どうやら事前に知らせてはいなかったみたい。他の隊士達からもザワザワとしたどよめきが聞こえた。…一番隊は他の隊より先行して活動する、所謂斬り込み隊。一番隊員の行動一つで、任務の成功確率が左右されかねない。故に、一番隊には高い能力を持った人間が必要なんだと。副長さんが言いたいのはそういうことなんだろう。新人の女なんかに一番隊が任せられるか、と


「あ、あのー」
「ん?どうした、ザキ」
「えっと、茜さんに質問なんですけど…一番隊に入るってことは茜さん、普段はどんな仕事されてたんですか?」
「へ?ああ…」


つまり、私に一番隊に入れるだけの実力があるのかと遠回しに聞いてるらしい。…大人しそうな顔して鋭いところをつくなァ…。彼は何番隊の人間なんだろうか。んー…監察、とかかな?そんなことを考えつつも、私はふわりと笑みを浮かべた


「普段の仕事、ですか。そうですね…」
「松平のとっつァんが言ってた話じゃ、茜くんは幕府官僚の護衛をしていたんだよね?」
「それはー…ええと、表向きです」
「え?表向き?」
「もちろん護衛もしてました。けど、実のところは暗殺部隊に属してたんです。攘夷浪士の他にも、幕府機関で悪事を働く人間を消すよう言い付けられてましたので」
「「「「え゛」」」」
「だから、皆さんの役に少しは立てるかと思うんです。隠密でも特攻隊でも」


そうニコニコと微笑み返せば、副長さんや局長さんを含め隊士達は皆、顔をサッと青ざめさせていた。?どうしたんだろう?…もしかしてもう少し自分の能力を見せないと、真選組に採用してもらえないのかな…どうしよう


「(ひそひそ、)お、おい近藤さん…何でまたこんな面倒くさそうな奴寄越すんだよ…!アイツ目が死んでんじゃねーか笑顔に影あり過ぎだろ…!むしろ要注意人物として取り押さえてもいいくらいだ!!」
「(ひそひそ、)お、俺も松平のとっつァんに紹介されただけで知らないよ…!そんな暗殺部隊に属してたなんて…」
「?あの…局長さん?」
「へっ?あ…な、ななな何でしょうか?!」
「(何で敬語?)…とにもかくにも、今日から10日間よろしくお願いします!」
「「……」」


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警戒されちゃうヒロイン





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