April.18_12:12


新垣邸に討ち入った結果、真選組に数名の軽傷者はでたものの、斎藤一派は幹部を含む40名全員が見事お縄になり事実上の壊滅を迎えた。上から気持ち悪いぐらい大袈裟にお褒めの言葉とやらをいただいたが、それを素直に喜べるような俺達ではなかった

「土方さんは信じますかィ?」
「…幕府の誰かが斎藤一派と手を組んでたって話か?」
「茜のやつが言ってただけですけどねィ」
「…まああんだけの武器密輸を繰り返してたんだ。たぶんその情報は本当なんだろう」
「おっ、珍しく茜を信じると?」
「……別に進藤を信じとるわけじゃねーよ。それより総悟、お前今日もアイツ連れて仕事行く気か?」
「?そーですけど。何か問題でも?」
「問題ってほどじゃねーけどよ、アイツがぶっ倒れたのも昨日の今日だろ?少しは休ませて…って人の話を聞けェェェェ!!」

後ろで土方が何やら言ってたが無視し、俺はそのまま茜の部屋に向かった。……言われなくても、俺だって別に無理強いするつもりはねーや。何勘違いしてんだ土方コノヤロー。…ただ、ちょいと様子見に行くだけでィ




***




俺達幹部の部屋から少し離れた場所に、そいつの部屋はある。近藤さんが用意した、所謂客間は今は茜の寝泊まりする部屋になっている。…っと、ここの角を曲がった先に…。ひょいと角から顔を覗かせる。するとその部屋の前の庭に面した縁側で、寝そべる1人の人影が見えた

「すーすー…」
「あれ?沖田さん…どうかされたんですか?」
「……、」

…そこにいたのは寝息をたて寝そべる茜と、茜を膝の上に乗せる若い女中の姿だった。…あー確か茜に買い出しを頼んだ、新人女中だったっけか?近藤さんが募った募集につられた物好きだ。俺は彼女らの元まで近づき、ポケットに両手を入れたままじろじろと見やった

「…ふーん、あんたらそーいう関係だったのかィ」
「!ち、違いますっ。ただ私は以前買い出しをしていただいたお礼に…」
「それで膝枕かィ」
「え、ええ。まあ…というか沖田さん、あの…何か怒ってます…?」
「何で」
「眉間に皺が…」

しどろもどろにそう言う女中に若干イラつきながらも、俺はそいつの膝の上でぐーすか寝る茜の顔を覗き込んだ。…ったく、部屋で大人しく寝てればいいものを。昨日の夜屯所に運ばれてからも、暫くフラフラ動きまくってたからな…茜のやつ

「うわ、ひっでー隈」
「…茜さん、昨日倒れてからどうにも寝付けなかったらしいんです。それで私、茜さんの為に何かしてあげたくて…」
「……」

ー…まだ真選組に来て5日だっつーのに…。茜のやつ、新米の女中にここまで想われてるとはねィ…。まあコイツの場合、変に馴染みやすい雰囲気は持ってたし。自分から周りと関わろうと必死になってた部分もあったしな。…そういや倒れたコイツを屯所に運んだ時も、色んな隊士や女中が大騒ぎしてたっけ。最初はどいつもこいつも幕府上層部の人間だって警戒してたくせに…現金なやつらだ

「?…沖田さん?何で、笑ってるんですか?」
「いや、こっちの話でさァ」
「?」

俺が言った言葉通りに温もりに慣れようとしたコイツが、思ったよりも早く真選組(ここ)の連中と打ち解けられたのが…何だか少しおかしかっただけで。別に、たいそうな意味はねーや。俺は自然とゆるむ口元を手で隠し、寝てる茜の黒く長い髪をサラッと指で梳いてやった。するとそれに気付いたのか、茜の目がゆっくりと開いていく

「…ん、う…?」
「あ、やっと起きやがった」
「!茜さん、おはようございますっ」
「…おはよ、ございます。お二人とも」

ふわあ〜と大きな欠伸をしてから、茜は上半身だけむくりと起き上がる。そして「…あ、なるほど」と小さく笑った

「?茜さん?」
「…いや、いつもより寝つきが良いと思ったら凛さんのおかげだったんですね」
「えっ?」
「凛さんの膝、柔らかくて気持ち良くて。…膝枕なんて初めてだけど、案外良いものなんですね」
「!わ、私…お役に立てたでしょうか…?」
「うん、勿論です。ありがとう」
「……」

女中の頭を撫ではにかむ茜と、それに顔を真っ赤にさせる女中。(つーか名前、凛っていうのか)……何だこのふわふわした空気。気持ち悪いんだけど。え、何?この小説って百合だったの?え?…女同士って、こんなもんが普通なのか?あいにく男所帯で育ってきた俺にはよく分からない。…まあ理解したくもねーけど

「…茜、お前もう十分休んだろ?さっさと仕事行くぜィ」
「!わっ…」
「!」

俺は茜の襟首を掴み、ズルズルと身体ごと引き摺っていく。ぽかーんとした表情をした女中だけが1人その場に残された。……あー畜生、地味にイライラしてきた。何でだ?「お、沖田隊長っ。凛さんにお礼が言えてないんですけど…」なんて茜の言葉を無視し、俺は黙々と歩いた


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長いので次へ。





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