こうもすれ違うのは何故ですか?



「次、借り物競争かあ…」
「いい札引ければいいよねー」
「いい札って、どんな…?」
「借りるものが水筒、とかさ。なんか手軽に手に入りそうなやつ」
「あーなるほどね。確かにー」

同じクラスで借り物競争に出る女の子達と連れだって、入場門へと向かう。う、ドキドキしてきた…!今の私たちのクラスは他クラスと点差はあまりひらいていない。故に借り物競争のポイントによっては首位もありうるわけで…クラスのみんなの「女子三人で一位二位取ってこいよなあー!」なんて声援?を受け、私たちは借り物競争に臨むわけなのである

『次は借り物競争です』
「…!」

アナウンスと共に、入場門から借り物競争に参加する人達が一斉に移動する。…私は走るのなんと一番目だから、一列めに並び順番を待つ。う…嫌だな、走るの苦手だからそれこそいい札が欲しい。というか、あんまり誰かに「〜を貸してください」とか言い回すのも、人見知りだから苦手だし…!…とにかく、良い札を…!

『よーいー…スタート!』

パーンと鳴る空砲の音に、スタートダッシュをきる。ごたごたと入り乱れる人の波のなか、真ん中あたりの位置をキープして走る。するとすぐ前方にお題の書かれた紙が一列に並べられていた。…あ、あれか…!

「(よ、よし…!じゃあこの右から二番目の札を…)」

ぱっと目についた紙を取り、折り畳まれたそれをがさがさと開いていく。お、お題は一体何ー…

「………え?」

お、おかしいな…私の目が変なのかな。私は目をごしごしと擦り、お題の紙をもう一度開き直した

「………やっぱり、双子って書いてある……」

………な、何で?双子って、そんな…。お題の紙にでかでかと書かれた双子の二文字に、身体がぴしっと固まった。…ど、どうしよう。双子って…!双子って…!ふ、双子を借りてくればいいの?双子なんて言われても思い浮かぶのはー…

「?澤原さんどったのー?」
「みほ!お題なに!?」
「みほちゃん早く早くっ」
「…!!」

コース脇の応援席からクラスの子達が私に声をかける。みんな「私いつでも出れるよー」「俺も俺も」「お題にあう人いる??」なんて優しく言葉をくれる。…けど、私のクラスに双子はいないし。というか同じ学年に果たして双子は浅羽くん達以外にいてー…

「おーいみほっち、こっちこっち!」
「!」
「澤原さん。だ、大丈夫ですか?」

クラスの応援席から少し離れたところから声をかけてくれたのは、橘くんと松岡くんと浅羽祐希くん悠太くんと塚原くんだった。み、みんな…!見に来てくれたんだ…!

「みほっち、お題何だったの?」
「え…!」
「なんか困ってるみたいですけど…」
「俺たちで力になれることあれば、力になりますよ?」
「…え、えっと…」

こ、これは…言っていいのかな。お題は双子です、なんて…。…優しさにちゃんと答えたい思いもあるけど、こんな風に頼っていいのかな。それに全学年の女の子がたくさんいるなかでわざわざ浅羽くん達を引っ張りだしたら、少し気まずいような…

「(……それに、)」

…浅羽くんと、さっき気まずかったし…。何でだろう、さっき謝ったのに…なんて。子どもみたいにへそを曲げてる私は、ひどく情けないただの頑固者だ。…浅羽くんが何か怒っているのは、私に原因があるはずで。それを思うと、今浅羽くんと目線を合わせるのが少し怖い

「……」
「…?みほっち…?」
「…あーもうみほ!ちょっと借りるよ!」
「!あ」

ぴっと私の手から、応援席からコースのほうに出てきたカヨちゃんがお題の紙を奪う。あ、えっ、カヨちゃんん…!

「なになにー……"双子"???」
「「「「「「!?ふ、双子?」」」」」」
「えっ双子?」
「「…双子…」」

……。カヨちゃんがお題を読み上げた次の瞬間から、沈黙が続く。…そ、そうだよねうん分かってましたこのリアクションは…。双子なんてお題、クラスの子達じゃどうにも出来ないし、むしろ…

「ー…じゃ、行こっか」
「!?へっ…」
「…澤原さん、走って」

ぱしっ。左手と右手を掴まれ、私はぐいぐいと引っ張られながら走る。えっ…えっ…!?左にいる浅羽悠太くんと右にいる浅羽祐希くんの顔を交互に何回も見つめ、私の頭はパニック状態。と、というか、浅羽くん達足速…!足が追いつかない…!むしろ引きずられてる感じになって…!

『ゴ、ゴール!』

………気付いた時には私は浅羽くん達とゴールテープを切っていた。す、すご…い。流石浅羽くん達…!へろへろになってその場でハァハァ…と息を切らせば、浅羽悠太くんに「大丈夫ですか?」と声をかけられた

「う、うん…おかげさまで…」
「ごめんね、急に走らせちゃって。双子なんて他に借りてくるの大変そうだったから、つい…」
「う、ううん。本当にありがとう…!」

おかげで二番という好成績を取れることが出来たし、本当に感謝するしかない。(強いて言うなら周りの女の子達からの視線が怖いことと、歓声が少し静かになってしまったことくらいだ)

「あー…でも得点ってどうなるんですかね」
「え…?」
「ほら、俺青組だし祐希は赤組だし、澤原さんは黄色組ですよね?」
「あっ確かに…!じゃあこの借り物競争の点数は…」
「うーん一体どうなるんだろうね。祐希はどう思……祐希?」
「?浅羽、くん…?」

ぼーっとした様子の浅羽くんは私と浅羽悠太くんの問いかけに反応せず、じぃっと繋いだ手を見つめていた。?浅羽くんどうし…って、あ!そっか…!

「ご、ごめん浅羽くん!手繋いだままだったよね…!本当にごめん…!」
「え?」

もうゴール出来たんだし、ずっと繋いでる変だもんね…。「浅羽くん、本当にありがとう。借り物競争協力してもらっちゃって…」なんて言って、手を離そうとする。が、浅羽くんのほうがぎゅっと力を込めたままだから離すことができない。??え、っと…

「浅羽、くん…?」
「……」
「…?あ、あの…」
「…おい、祐希お前いつまでやってんだよ」
「…!」

「次の競技に移るってよ。つーか俺も祐希と悠太も次の騎馬戦出るだろ?」と応援席からグラウンドのほうに出てきた塚原くんの声に、浅羽くんはやっと意識を取り戻したかのように、ぴくっと肩を跳ねさせた。「浅羽くん…?」ともう一度彼の名を呼べば、浅羽くんはやっとこっちを向いてくれた

「あ……ごめん。手、だよね」
「え、えっとそれもだけど…浅羽くん、大丈夫…?もしかしたら具合悪い…?」
「祐希…、具合悪いなら次の騎馬戦誰かに代わってもらったほうがいいよ」
「え?なに、お前具合悪いの?」
「えー!ゆっきーそうなの?午後も応援団あんじゃん。大丈夫?」
「ゆ、祐希くん大丈夫ですか?保健係さんのテント行きます…?


わらわらと次々に応援席から出てきた松岡くん達がそれぞれ浅羽くんを労る。が、浅羽くんはそれに「いや……何でもないですから」なんて言って、すたすたと行ってしまった。…?浅羽くん、どうしたんだろ…?いつもと様子が違うみたいだったけど…



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次に祐希くん視点のお話をもってきます




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