「結婚します」



「え、みほのお兄ちゃんって穂希高校の卒業生なの?」

昼休み。お弁当を食べ終わった私とカヨちゃんは職員室へと向かっていた。私がとある行事の役員で、このプリントへ東先生に印鑑をもらう必要があるためだ

「今は普通のサラリーマンをやってるんだけどね」
「じゃあ結構年離れてるんだ?」
「うん、そうだね」
「……あれ?待てよ、そしたらみほのお兄ちゃんってもしかしてさ…」
『うーん、どうしようかなあ。これ事務所的に言っていいかなあ
えーっ何ですか何ですか??言ってくださいよお!』
「…?」

これ、浅羽くんと橘くんの声…?廊下中に響き渡る声は、おそらく各教室や廊下に取り付けられた放送のアナウンスからのようで。ざわざわとざわめく皆と一緒に、私とカヨちゃんも「何だろうねー」と首を傾げた

『ー…東晃一。この春結婚します!』
「えっ…」
「はっ?」
「「「「「「ええええええええええええ!??」」」」」

校内に悲鳴が響き渡った



**



「やっぱり浅羽くんと橘くんだったんだ…」
「ちょ、やっぱりってひどくねみほっち!」
「あ、えっと、ごめんなさい声的にって意味で…」

あれから職員室にたどり着いた私はカヨちゃんとは別れ、東先生に印鑑をもらえた。が、なんとそこには先ほどのアナウンスの件で叱られてるらしい浅羽くんと橘くんがいた。…どうやら放送室でふざけてたら、こうなってしまったらしい。つまりは、東先生の結婚も誤報だったってこと

「…まあ、もうすんでしまったことは仕方な…いや、あんまり仕方なくもないけど…」
「東先生…」
「あーっそれにしてももう恥ずかしくて死ねるわー!俺達のしょーもねえ寸劇が全校生徒に…!」
「全部千鶴のせいだよ。嘘の情報まで撒き散らして何やってんの」
「いや…ばらまいたの浅羽くんだからね」
「……」

…でもこうやって会話が軽く続くのも、東先生相手だからだよね。東先生は生徒とある意味で近い距離で接してくれるから。私も、東先生なら人見知りしないで話せるし…。私は東先生を見つめ、本当に怒ってるのか怒ってないのか…どうなんだろう、なんてぼんやり考えた。だって東先生なら付き合ってる人ぐらいきっと…

「でも困ったねこの状況どう収集つ…っ、けほっけほっ」
「?先生、風邪ですか」
「あ、ごめんごめん。ちょっと朝から調子悪くて…」
「だ、大丈夫ですか?」
「えーじゃあ大変ですね。今日は災難続きで」
「橘くんがそれ言うんだ?」

ツッコミをいれた東先生に「最近は気候の変化が激しいですもんね」と頷けば、「澤原さんも体調には気を付けてね。もうすぐ卒業式だから」と言われた。先生…そう言う東先生が風邪を引かれてるんですよ…!先生こそご養生しないと

「先生〜近々結婚の予定とかないですか〜?」
「…あはは、結婚どころか今は…」
「彼女もいないんだよねっ」
「!あきら!?」
「チョコバナナ!何でここにっ!?」
「君たちこそ何で職員室にいるの?あっさては先生に怒られてるんだなー?あははっ小学生みたーい」
「お前だよ小学生は」

突然現れたのは黒髪の少し童顔の男性。?ちょ、ちょこばなな?橘くん達のお知り合いなんだ…。私はその男性の顔を見ようとズイッと覗きこみ…

「って……あきら、さん?」
「んん?あれっみほちゃんだあ!久しぶりーみほちゃんもこーちゃんに怒られてんの?」
「「「!?えっ…」」」

「みほっちチョコバナナと知り合いだったの!?」と酷く吃驚したような橘くんに、「あきらお前何で…」とこれまた吃驚した様子の東先生に、「えっと…どんなご関係で?」と首を傾げた浅羽くん。あ、そっか私浅羽くん達には何も…

「実は…むぐっ」
「ふっふふー!秘密!」
「は、はあ?なんだそれ!」
「……」

口をあきらさんの両手に覆われ、私の言葉は音にならず。じろっと睨むように見つめてくる浅羽くんの視線を感じつつ、私は後ろに回ったあきらさんに首を傾げた。「あ、あきらさん何で…」「だーって黙ってたほうが面白そうだもん」とひそひそ話をし、あきらさんはニコニコと微笑んだ。ええっそれはどういう…

「?…いや、まあそれにしてもあきら、用もないのにふらふら遊びに来るなっていつも言ってるだろ」
「えー?ちゃんと用事あって来たんだよう。さっきケーキ買ったからお茶していこうって」
「帰れ」
「(あ、東先生が怖い…)」
「ぶーつまんないの!せっかくお土産持ってきたのに」
「「「「?お土産?」」」」

首を傾げる私たちを余所に、あきらさんはごそごそとポケットを漁った。そして取り出した一枚の写真を私たちに見せる。?女の人の写真…?

「じゃーん!こーちゃんにお見合いっ!」
「「「!?」」」
「おっ…お見合い!??」

「なんかねえ、僕のお母さんが知り合いのおばさんにこーちゃんのことよく話しててね…」と相変わらず笑顔のあきさんに、東先生が「ちょ、ちょ、ちょっと待て!」なんて顔を真っ青にさせる。…綺麗な人、だけど…あきらさんまさか勝手に縁談を…?

「い、いいよ俺はまだお見合いとか!悪いけど断って…」
「えーでも明日でもうセッティングしちゃってるしぃー」
「はあ?!明日!??」

ー…そのまさかでした。明日ってまたこれは急な話…。あきらさん、それはいくら何でも…

「先生…そんなあっさり断りことないじゃないですか」
「!えっ…た、橘くん?」
「もしかしてその人こそが先生の人生のパートナーになるべき人なのかもしれないですよ?」
「?!あ、浅羽くんまで…」
「とっても良い話だと思います…やりましょうお見合い!嘘じゃなくなりますし!」
「…良い話っていうのは君たちにとってだよね?」

な、なんかみんな変に盛り上がってる…??なにこのテンション…!若干ついていけない私と東先生を余所に、三人の東先生お見合い作戦は始まったのでした



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この中編に限ってはギャグ色強めでございます




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