ちょっとだけ意地悪です



◎IF付き合ってる設定


コンビニに寄りたい。その浅羽くんの一言により、私達は帰り道コンビニに立ち寄った。なんでも浅羽くんは雑誌を買いたかったらしい。コンビニの自動ドアをくぐって早々、ふらふらと雑誌コーナーに行ってしまった浅羽くん。…買うまで少し時間かかるよね。私も何か飲み物とか買おうかなあ。ちょっと見てこよう


「!あっ…」


飲み物を買おうとした私の目に映ったのは、生クリームをたっぷりのせたロールケーキだった。(あのお一人用のパッケージに入ったやつです)うわあ私ロールケーキ大好きなんだよね…!美味しそう…!キラキラと目を輝かせ、ロールケーキを取ろうと手を伸ばす。が、私は一瞬冷静な思考を取り戻しその手を下ろした。そんな私に雑誌片手の浅羽くんが後ろから近づく


「あ、ロールケーキだ。美味しそう」
「浅羽くん…」
「あれ?澤原さん、買わないの?お菓子のなかじゃロールケーキ一番好きなんでしょ?」
「…迷ってるの」
「?何で?」
「……太る、から…」
「?」


「澤原さん、痩せてるじゃないですか」と首を傾げる浅羽くんに、私はブンブンと首を横に振った。…分かってる、分かってるよ。最近体重がヤバくなってきたことくらい。お腹なんてだるーんってなってるもん…!そんな風に頭を垂れる私を見て浅羽くんは何を思ったのか、後ろから私の脇腹のあたりを軽く両手で掴んだ


「!ひゃっ…!?」
「…そんなに太ってるように感じないけどなあ」


「でも澤原さんってもしかしたら着痩せするタイプなのかもね?」なんて言葉を付けたし、浅羽くんはパッと手を離した。び…ビックリしたあ…!浅羽くんったら急に遠慮なしに触れてくるんだもんなあ…。ドキドキとする瞬間が、浅羽くんといると多すぎる。私はどきまぎとした態度のまま、軽く頷いた


「ど、どうだろうね」
「…いつかオレにも、澤原さんが本当に着痩せしてるかどうか分かる日が来ますかね?」
「?な、何で私に聞くの?」
「いや、澤原さんの覚悟と優しさ次第ではその日も遠くないので」
「??覚悟と、優しさ…?」


「例えばオレを、澤原さんの両親のいない日の、澤原さんの部屋に招待してくれるとか…そんな優しさが欲しいですかね」と薄く笑った浅羽くんに、思わず疑問符を浮かべた。??何でそんなに条件が細かく…?その条件で私は浅羽くんを家に招けばいいの…?


「……これじゃオレだけが欲にまみれてるね。要か千鶴あたりがいたら殴られてるかも」
「え?」


それは…どういう意味なんだろう??そう聞き返せば、「オレは健全たる男の子だということです」と返された。?ますますよく分からない…


「…まあ買っちゃえばいいんじゃないでしょうか。澤原さん普通に痩せてるし」
「……そういう油断の一つ一つが罠だって、カヨちゃんに昨日叱られた…」
「うーん、丸山さんはなかなか手厳しいですねえ」


カヨちゃんは基本的に厳しいからね…まあそれがカヨちゃんなりの優しさなんだって私は分かってるけども。…やっぱりお菓子なんかはカロリー高いしやめとこう!うん


「や…やっぱり買わない!決めた!」
「おお、声大きいですね」
「!っ…ごめんなさい…」


ここコンビニなんだから普通に人いっぱいいるのに…!私のバカ…。少し驚いたような表情をするコンビニのお客さん達を見て、私は顔を真っ赤にさせる。ああ恥ずかしい……。「ご、ごめんね時間とらせて。じゃあ行こう?」と浅羽くんに声をかける。が、浅羽くんは何を思ったのか、私がさっきまで睨めっこしていたロールケーキを手に取った


「オレは買おうかな」
「えっ?」
「このロールケーキ」
「!」


「美味しそうだなーこれならお金も無駄じゃないよねー早く食べたいなー」なんて淡々と言葉を紡ぎ、浅羽くんは私のほうをじっと見つめる。……こういう表情をする時の浅羽くんは、ちょっぴり意地が悪い。まるで悪戯を思い付いたような子どもみたいな顔をする。私はそんな浅羽くんにむっと頬を膨らませ、軽く睨んでやった


「……浅羽くんの意地悪…」
「意地悪?どこがですか?」
「…そういうところも全部」
「オレのこと嫌いになった?」
「…嫌い、ではないけど…意地悪だなって思う」
「それじゃ最初の質問に戻りますが…」
「も、もういいです。私、ロールケーキ買ってくる…」
「じゃあオレも。雑誌とロールケーキ買わなきゃ」


そうして二人してレジに向かう姿は何だか少し滑稽で。ちらりと盗み見た浅羽くんの口元がゆるく弧を描いてたものだから、私は「…私が太っても浅羽くんは嫌いにならないでね」と口を尖らせた


−−−−−−
そして数秒後、君は私に「当たり前です」と笑う




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