ぼくの目はちがいに敏感です



「ふわあ……」


授業があまりに退屈で、つい欠伸を噛み殺す。…ん、板書はしなくていっか。テスト直前に要とか悠太にノート見せてもらえばいいことだし。もういいや。授業放棄します。ぐでっと机に肘をついて、また欠伸を一つ漏らした


「じゃあ次ー…澤原さん、59ページの例文を呼んで」
「……」
「…澤原さん?」
「……へっ?うあ、は…はい!」


教師に名前を呼ばれた彼女は、ガタッと慌てて席から立ち上がる。そして「す、すみませんもう一度言って下さいお願いします…」なんて頭を下げていた。それにつられて、何人かの女子が「もうみほったら何やってんの〜」なんてくすくすと笑う。…珍しいなあ、澤原さんは普段真面目に授業受けてるタイプなのに。ボーッとしてるなんて


「……」


澤原さんはオレの席からは横に一列離れた、斜め前の席。で、澤原さんの斜め後ろは要の席だったりする。…オレの席は少し彼女と離れてるけど、彼女の席は中央寄りなので、黒板を見ようとすると自然に彼女の姿が視界に入る。故に、彼女の姿を授業中よく眺める機会はオレは多い


「(…そういや、澤原さんが授業中寝てるの一度も見たことないよなあ)」


いつも必死に板書してるし、宿題もちゃんとやってくるし。クラスでは要の次くらいに頭が良いって話は本当なんだろう。実際勉強家だし。そんなことを考え、教科書の指示されたページを読み終えたらしい彼女は席についた。そして何故か目を何度も擦り、彼女は頬をパチパチと叩いていた


「………」


澤原さん、もしかして眠いのかな…?珍しいこともあるもんだ。何だろ…昨日の夜遅くまで何かやってたりしてたのかな、なんて。オレどんだけ澤原さんのこと考えてるんだろ、何か気持ち悪いな…。彼女への視線を敢えて外して、オレは軽く頭をブンブンと振った


「?ゆっきー…、なにしてんの?」
「んー、ちょっと煩悩を払おうかと思いまして」
「は?煩悩?」
「こら、橘!授業中に私語は慎みなさい」
「えええオレですか!」


先生に怒られた千鶴か「い、今のはゆっきーが…」なんて言い訳してるけど、無視。無駄に声のでかい千鶴が悪い。知らん顔をしてやります、うん。そんな千鶴と先生のやり取りにクラスの人達は「ああ、また橘か」なんて風にくすくすと笑う。オレはそのクラスの人達のなかで唯一、笑うのではなく「どうしたのかな?」なんて不安そうな表情をする澤原さんを真っ直ぐ見つめた。…なんというか、澤原さんはやっぱり少しずれてる。優しい子なんだろうけど


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2月14日2限。君はやはり気になる存在で




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