高校入学と共に京都を離れ、数ヶ月。祓魔塾の訓練生も今回の任務に加わるという名目で、俺達は予期せずに京都の実家に戻れた。そしてそこで、葵ちゃんとの久しぶりの再会。東京にいる間にちょくちょく葵ちゃんと連絡は取っていたものの、やっぱり直接会ってみて少し驚いてしまった。…暫く会わない間に彼女が何だか大人びたようで。小さい頃めそめそ泣いてたあの葵ちゃんとはまるで別人と言ってもおかしくない。…彼女は今までそんな風に落ち着いた眼差しで俺を見ていただろうか。漆黒色の瞳は常に射ぬくように俺をじっと見つめていた

「廉造くん、実は私ねー…」


そこで葵ちゃんが明かしてくれたのは以前金兄が俺に話したことと大体同じだった。葵ちゃんの家系は悪魔を引き寄せてしまう血を代々受け継いでいて、葵ちゃんが和尚さまら明陀宗に引き取られたのは正十字騎士団からの要請によるところがあったこと。…流石に俺も、学園長が直接葵ちゃんのところを訪れその説明をしたのには驚いたけど。全くあの人は一体何をしてはるんや…

「…じゃあ葵ちゃんも、今は悪魔が視えるようになったんや?」
「う、うん…」
「でも子どもの時も葵ちゃん、よく泣いてたりしたやろ?あれは?」
「あの時は確かに視えなかったよ。けど…何となく感じてた。そこには何もいないはずなのに、誰かが私を見てるような…敵意みたいなものを」

『だけどー…今は視えるようになったから。私も周りを警戒出来るし、お父さんや柔造兄ちゃんが私のために何をしようとしてくれてるのか分かったから。私は平気なの』

そう淡く微笑む葵ちゃんが何とも儚げに見えて、俺は思わず胸が苦しくなった。…葵ちゃんのそういうとこ、俺は正直好きやない。だって彼女はそうやって悪魔達に狙われていることに対してでなく、和尚さまや柔兄達が彼女を護ろうとしていることを憂いているのだから。自分が和尚さまや柔兄達の迷惑になってないだろうか、負担になってないだろうか…そう悩み悲しむ葵ちゃんが俺は少し理解出来ない。もっともっと適当に考えていて構わないのに

「(和尚さまも柔兄も金兄もみんなみんな、葵ちゃんのことが大切なんやから…体張ってでも護りたいに決まってるやろ…?)」

それに葵ちゃんは気付いているだろうか。少なくとも俺はこの命に懸けて、葵ちゃんのこと護ってあげたい。…こんなこと坊や子猫さんに言ったら"志摩(さん)がそんな熱いこと言うなんて似合わないわ"と笑われそうだけど。「俺、葵ちゃんのために立派な祓魔師になったるわ」という俺の言葉に、彼女が「うん、ありがとう。私、信じてるよ」と微笑んでくれたから。単純かもやけど、俺はその笑顔のために頑張ろうと思えるんや




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