人差し指が無くなってしまって、もう人を殺せないと私は泣いた。ベルは別に人差し指がなくたって人は殺せると笑った。確かにそうかもしれないけど、そうじゃないの。


「どうしようボス」


目の前の木箱に一人言をぶつける。大きさは3メートル3メートル、といったぐらいでとても大きい。そしてここはとても寒い、真っ暗。きっと一人では生きていけない。


「なくなっちゃったの、人差し指。スクアーロが助けてくれなかったら、死んでたって、私。笑っちゃうよね、ほんと…ほんとどうしよう、ボス」


わたし、ひとりじゃ生きれない。

7年前にザンザスがみんなとクーデターを起こした時ザンザスは一人で眠ってしまった。9代目は情けを見たのか、同情でもしたのか、暗殺部隊として私たちを隔離した。ボスの席はザンザスのために残しておいてある。毎日毎日使用人が綺麗に掃除しているからボスの部屋はいつもきれいなんだよ。私の部屋はベルが汚すからいつも汚いの。ねえ、いつ起きるの。


「あなたもう、一人になっちゃったの、人差し指が無いの、人が殺せないの。ザンザスから貰った銃が使えないの、どうしたらいいの」


後ろからカツンカツンと音がして、スクアーロが帰るぞって私の腕を引いた、涙で汚れた目を右手で拭ってくれる。その優しさが今はうざったいの。


「スクアーロだめ、ひとりにさせたら、ザンザス死んじゃう」
「いいから帰るぞ」
「だめ、だめよスクアーロ」
「ザンザスより、お前のほうが死にそうなんだぁ」


口をつぐんだ私をスクアーロは簡単に俵担ぎして、踵を返した。私は暴れもしなかった。


「また、鍵壊しちゃったから怒られちゃうね」
「そうだなぁ」
「人差し指、作るよ、私」
「そうかぁ」
「おそろいだよ、スクアーロ。そしたらベルにナイフの使い方を教わって、マーモンに術を教わるの、使えるかどうかは分からないけど」
「お前なら出来るだろぉ」
「あはは、がんばる」


オンリーオンリー
(そうやって、しあわせになるの)



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