※教師パロ。第三者目線。黒子はほんの少しも出てこない。


斜め前の席の友達が、少し火照った顔をして先生を見つめていることはうっすら知っていた。というのは先週彼女の親しい友人がデリカシーの微塵も無いように、なまえって先生のこと好きでしょ!と騒ぎ立てたからだ。これは酷いと、部外者ながらに頭を抱えたが、幸いにもその授業の前は、体育だったのだ。いつかそう問われることを覚悟していたように彼女は、体育を反論につらつらと言葉を述べる。嘘をつくのは簡単だと、思った。とても簡単だと。


「ねえ、わたし緑間先生が好きなの」
「……は?」
「あなた、いつもわたしのこと見てる」
「…気付いてたの」


彼女は突然に目の前に現れて、突然に告げた。確かになまえのことはよく見ていた。緑間先生のひとつひとつに一喜一憂する彼女は見ていてとても艶やかだったから。でもそれを何故私に言う。彼女の周りにはもっと仲の良い友達が居るだろうに。


「…みんなおかしいって、言う」
「え?」
「先生を好きになるなんておかしい、って」


悲しそうに、誰でもいいから慰めて欲しかっただけなのかも、となまえは笑う。それは言えないのではなくて、怖いだけなんだと気付いた。言ったところで、否定される気持ちを誰に言うのだろう。なまえは踵を返そうと口を開いた。


「ごめんね、こんな話して、みんなには内緒ね?」
「ま、まって!」
「えっ」
「私は、おかしくなんてないと思う。先生も、なまえも、同じ人間だから、」
「……ありがとう」


なまえは優しく笑ってまた友達の輪に戻って行った。これで彼女の心が少しでも救われてくれていたらいいと思う。そうやって少しだけ自嘲する、本当にそう言われたいのはどっちなのだろう。


「黒子先生」


嘘を隠した貴婦人
(見付けて欲しいなあ、なんて)



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