もうすこしで、みえそうなのに。ふふと自嘲する。会議中に響くエルヴィン団長の声を遮るように私の笑い声は響いたらしい。リヴァイ兵士長の眼は人を殺せそうだ。ああ痛い。
「どうかしたかいなまえ」
「ごめんなさい、思い出し笑い」
ハンジ分隊長がリヴァイ兵士長をこれ以上逆撫でしないように私に優しく問いた。私の返事はリヴァイ兵士長を逆撫でするには十分すぎる回答であっただろうが彼は何も言わなかった。リヴァイ兵士長は馬鹿ではない。
「これを踏まえて、なまえ、君はなにを思う」
「……とくになにも、私は心臓を捧げたままに生きるだけよ」
私たちに夢も希望もないと、誰が言ったのだろうか。私たちは生まれるべくして産まれたのだろうか。些細な偶然なのだ。全て。世の中の男女が小さなことを拗らせて。そしてそれがまた度重なる偶然で今になってしまっただけ。
「なまえ、てめえは馬鹿ではないが、馬鹿だな」
「意味が分からないよリヴァイ」
「ハンジ、てめえは馬鹿だ」
「えええ!ひどい」
巨人の溢れるこの世界で、生きるのか死ぬのか、どちらが辛い道なのだろうか。もうすこしで、みえそうなのに。ふふと自嘲する。会議中に響くエルヴィン団長の声を遮るように私の笑い声は響いたらしい。
「けんめいなはんだんだ」