彼女が視力という概念を持って生まれてくることはなかった。幸か不幸か、視力のない彼女にとって、この世界は幸せで満ち溢れていた。壁で覆われたこのひどくせまい世界を彼女は知らない。

目で入らない情報は耳から全て取り入れた。僕たちが教えることは、頭にお花畑が咲いているような幸せな話しばかりだったけれど。


「なまえ」
「なあに?ベルトルト」
「少し出掛けてくるね。アニとライナーが一緒にいるから大丈夫。すぐ帰ってくるよ」
「わかった、気を付けてね」
「花をいっぱい摘んで、帰ってくるよ」


手を降った。

それは轟音だった。地響きと共に百年と築き上げたものはがらがらと崩れおちてこわれた。空は青くて、鳥が飛んでいる。人類は幸せにすごし、笑っている世界は、今日で終わる。


「アニ、なんの音?」
「さあ、なんだろうね」


終わらない夢


~~??



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