「みょうじなまえ申します」


みょうじなまえ、花の高校生!世知辛い世の中を今まで生きてきたけど、夢の高校生デビューでバイトも始めた!ウフフ!…というのは丸々嘘っぱちで、今年から大学生で親元から離れ、少しでも金を稼ぐためバイトをしています。花の高校生も、夢の高校生デビューと呼べるものも経験することはなかったけれど、高校生からバイトを点々と続け、私の長所と言えばバイト経験が豊富なことくらいだ。そして今回は何度目かのコンビニ。トリプルスターとかそんな変な名前なコンビニ。


「じゃあみょうじさんは、一応忍足くんについてもらって、色々教えてもらってな!」
「忍足謙也や!よろしゅう!」
「よろしくお願いします」


忍足謙也。1つ上の先輩にあたる。このご時世にパツキンの男。悪い男ではない。恐らくノンケ、彼女の気はないが、経験済みそうだ。


「みょうじさんはなんで前のバイトやめたん」
「腹立って店長殴ってもうて」
「……へえ」


私の発言に少し恐縮した忍足さんはさっきから目を合わせようとしない。冗談で殴りますよ、と言えば豪速球の如く謝ってきた。なんやこの人おもろい。


「まあ知っとると思うけどレジはこうや」
「……早すぎてなにがなんだかわからへんのですが」


教える気あるんか、という目線を向ければ教える気しかあらへんよ、という目で見つめ返される。なんやこの人レジめっちゃはやいねんけど。タンタターン!で終わっとるねんけど。


「昔スピードスター呼ばれとってなあ」
「忍足さんがこのコンビニ選んだ理由って」
「せや!スターや!」
「……中高んときよく、アホって言われませんでした?」
「なんでわかるん」


なんやこいつ天才か、みたいな顔をして私を見る忍足さんを見てアホやなこいつ、と思った。それから何時間か忍足さんのそばで早すぎるレジやその他諸々教わり、じゃあレジ立ってみよか!と今更過ぎる言葉をかけられて、客5人目。私コンビニ体験者言わんかったか…。と頭を唸らせて並んだ客を呼べば見知った顔が。


「なんや似合っとんな、それ」
「何しに来とんねん財前!」


そういえばこのコンビニ進めてくれたの財前だったな、と思い出して全てを理解した。財前が指差したコンビニのユニフォームの袖口をチラ見して、業務を再開する。客になんて口聞いとるんすか謙也さん、うるっさいわ!ほんま何しに来とんねん!、みょうじを見に来ただけなんで謙也さんに用はないっす。


「410円です」
「なんやお前ら知り合いやったんか」
「みょうじあと5分で終わりやろ?外で待っとる」
「なんや付き合っとんのか!?」
「ありがとうございました」


忍足謙也の働くコンビニで働く話


20140811
財前は大学の友達



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