ボスが血を流して倒れていた。私に分かるのはそれだけ。なんで、とかどうして、とか理由なんか全然分からない。だってこんな風なボス見るの初めてだったから。
「ボス!」
その近くにはスクアーロがいた。その近くにはベルがいた、ルッスーリアもレヴィも、マーモンも。真っ赤だった。血の水溜まりに眠るように倒れていた。
「やだよ、ねえ」
彼らの身体を揺すった。ねえ、ねえ、と何度も問い掛けた。名前を呼んだ。なのに返事はない。冷たい、冷たいよ。
「今日はボスの大好きなお肉だって、豪華なディナーだって、言ってたじゃん…」
何度も何度も揺すった。名前を呼んで、問い掛けて。ボス、スクアーロ、ベル、ルッスーリア、レヴィ、マーモン。揺すっても揺すっても氷の様に冷たい。
「みんな待ってるよ、…ねえ、早く起きて帰ろうよ…」
私の着ていた隊服もみんなと同じように真っ赤に、赤く染まっていた。べっとりと赤く。
「ねえ、ねえってば」
酸素に触れた赤は黒ずんでいく。赤かったみんなは暗殺部隊に似合うような黒に染まっていく。私も同じように少しずつみんなと同じに赤から黒に。
「早く、帰ろうよ」
冷たい、冷たい。
「ねえってば!!」
―――もう、動かないと、分かっていたのに。
「あああああ!!!!」
冷たい冷たい、夏の。
There is even no beginning any longer.