自分のものにならないなら、いっそこの世から消えてしまえばいいのに。


「おはよう」


起きればいつもこいつがいた。どんなに朝早い任務の奴がいてもこいつは必ずおはようと言った。それから分かりきったようにコーヒーや紅茶を出してくれる。食事もそうだ。何も言ってないのに目の前には食事が並んだ。それから軽く独り言のように任務の確認をして、いってらっしゃいと笑って言うんだ。


「おかえり、お疲れ様」


任務を終えて帰れば笑って出迎えるこいつがいた。どんなに遅くなっても、帰るのが朝方でも。ずっと今まで起きてたようにおかえりと笑う。それから面倒な報告書や書類整理も嫌な顔せず手伝ってくれた。疲れた様に欠伸をすれば、寝ていいよ、と肩や膝を貸してくれた。多分どんなところで寝るより一番よく眠れた。


「…!」


初めてこいつが泣いた時は驚いた。別に喜怒哀楽が乏しいわけではない。だけどこいつは何があっても笑ってる奴だ。どんなに嫌がる事をしても笑っていた。もー何やってるの、って。

そのときはたまたま幹部全員で行く大掛かりな任務があった。その時もあいつはいってらっしゃい、ちゃんと帰ってきてね、と笑って見送ってくれた。だけど不安でしょうがなかったんだろう。いつもは単独かペアで行く任務に全員で。しかも一緒に帰りを待つ人もいない。虚空という不安に押し潰されそうだったんだろう。その、幹部全員で行くまでもなかった任務から帰ればあいつはいつも見たいに笑う事なく泣き出したんだ。


「うっ、うわああああん」


今まで溜めてきたものを全て吐き出すように泣いたあいつは子供のようだった。いつも俺たちを支えてくれるようなあいつではなくて、支えてやらなければいけないような。


「っ…よかったあ…!帰ってきたあ…!」


その日そいつは初めて俺達の前で寝顔を見せた。


おやすみハニー
(しあわせにおねむり)



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