喋らないこれに私は妙に落ち着いた。
殺人狂のベルでもなく、うるさいスクアーロでもなく、金に貪欲な赤ん坊でもなく、オネエな死人好きなルッスーリアでもなく、ボスを愛してるレヴィでもなく、強欲なボスでもなくて。
これがヴァリアーに来たのはリング争奪戦が始まる一週間前。私は元々守護者ではなかったからほとんど関係はなかったんだけれど、彼は、空席だった雲の守護者の席に、多分最初から座ることが決まっていたかのようにすっぽりとおさまった。
これは見た目通り喋らない。喋ると言っても動く時の機械音のみ。だけどそれがやけに落ち着いたのだ。
毛布に身を包み、両手にココアの入ったマグカップを握り独り言の様に愚痴をこぼす。聞いてるかどうかも分からないけれど、黙って聞いてくれるのが心地好かったのかもしれない。喋らないと分かっていたから返事がないのも寂しくなかった。喋らない、最初からそういうものだった。
ジャポネーゼでリング争奪戦が行われると、屋敷が慌ただしくなりはじめた。そんな私に告げられた別れ。守護者ではない私はイタリアに残る。でも雲の守護者のこれは、ジャポネーゼに行かなければいけない。

「モスカ、…さよならね」
「さみしいけど、頑張ってね」
「遠くだけど応援してるから」
「ねえ、」
「わたし、」

「あなたのためならしんでもいいかな、なんて」


わたしのために
(死んでくれたらいいのに)

20120524~20150706



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