今日は滅多に休みがない彼とのデートだった。久しぶりの休みに彼も私も気分が良くて、楽しい時間は余りにも早く過ぎていく。朝から一緒にいたけれど、もう辺りは真っ暗だ。

「もうこんな時間だね」
「そうですねー」
「…お仕事ある、もんね」
「すみませんー」

気持ちの気の文字も感じられないくらい気の抜けた彼の口調も、彼の表情を見ればそんなの気にならなくなる。とても泣きそうに本当に申し訳ないように眉間に皺を寄せる姿に、謝りたいのはこっちの方だ。毎日毎日忙しい仕事をしてやっとのお休みをわたしのために使ってしまった。また眠ったらすぐに仕事だというのだろうに。

「今日はありがとうね、ほんとに楽しかった」
「ミーもですー。送りますね」
「そんな、お仕事あるのに」
「もっと一緒に居たいからいいんですー」
「…ありがとう」

握られた手がやけに暖かくて離したくないと思わずにはいられなかった。それは彼も一緒だと言っているように固く握られた手が愛おしい。離したくない、ずっと握っていたい。それが叶わないならせめて、少しでも近くにいたかった。わたしは、フランの仕事も何も知らない、知らないのだ。

「ここまでで平気、ありがとう」

わたしばかりが未練がましく握っていた手がするりと離れていく。少しだけ残るフランの温もりがこの瞬間だけはひどく憎らしくて仕形がない。次はいつ会える?電話はかけていい?わたしはいつも待つばかり。

「フラン!」
「なんですかー」

手の温もりが消える前に彼を呼び止めて、わたしはその両の手を胸の前で願うように握った。

「月が、綺麗ね」
「とても、綺麗ですね」

月明かりが、君のエメラルドグリーンを照らし続けるまで、ずっと見つめていた。


きれいでいたい
(月のように、)

20120519~20150706



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