ビー、と試合終了を告げるブザーが鳴る。…ああ、終わった、終わった、私の。


夏のインターハイで黒子テツヤがその姿を象徴するように部活を辞めて行った。多分この事を知っているのは一群の少数だろう。その時、赤司征十郎が黒子は部活を辞めるだろう、とぼやいていたのを思い出した。それはきっと口に出さないだけでみんな感じていたこと。黒子テツヤから感じる劣等感、それはもう可哀想なくらいに。
キセキの世代と言うのは時に酷であった。この紫原敦もそうである。一群に上がってきた部員に卑劣な言葉を向け、心無い言葉を捧げた。でもそれはきっと彼なりの優しさ、であったのだと思いたい。生まれ持った才能、生まれ持ってしまった才能。どこに捨てることさえも出来ず、彼らは一人でその重みを抱えた。努力なんて、無意味なんだ、と。だからこそ、黒子テツヤはその言葉の真意を間近で見つめ、バスケから手を引いたんだと。そして私も今日、その手を引くことになるだろう。

ビー、と試合終了を告げるブザーが鳴る。ああ、終わった、終わった、私の3年間。キセキの世代は帝光中バスケ部の役目を終える。それと同様私もマネージャーの仕事を終える。終わったのだ、と赤司征十郎が告げる。涙を流すことは無かった。何故なら私は黒子テツヤ同様、彼らの才能に現実を見ていたからだ。全てを兼ね備えた彼らに何が必要なんだと。私はやっとキセキの世代から、開放されるのだと、そう。紫原敦が私のなまえを呼ぶ、紫原敦のその大きな掌が私の小さな無力な掌を包み込んだ。


「一緒に来てくれない?」


ビー、と試合終了を告げるブザーがなる。それはいつしか試合開始を告げるブザーに変わっていた。


今までの人生
しかしそれでも終わらなかった


2013??~20140607



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