赤司征十郎という男は、幼なじみの私でもよく分からない男。だから普通の人間が到底理解出来るわけがない。と思う。
「あのーすみませーん」
「はーい」
キュ、キュとバッシュの摩擦音が響くそこで私の問いかけに応えたのはピンクの可愛い桃ちゃんだった。
「桃ちゃん、いつもお疲れ様」
「ありがとー。今日はどうしたの?」
「ああ、赤司にこれ」
桃ちゃんに半ば押し付けるように数学のノートとポカリを渡した。桃ちゃんは、え?と声を漏らして、片手にノート、空いた片手にポカリを持って見比べていた。
「ポカリはまだいいとして、なんでノート?」
「寝てたから、かな」
「なまえちゃんが?」
「赤司が」
桃ちゃんの笑顔がぴしりと固まってわなわなと顔を歪ませ始めた。次には嘘でしょ?!と声を荒げた。
「嘘言ってどうすんの」
「え、だって、あの赤司くんでしょ」
「他にどの赤司がいるの」
「どうしたんスかー?」
桃ちゃんの叫び声に寄ってきたのか、ピンクの横から頭を見せた黄色。黄瀬くんは私に気付くと久しぶりっスねと笑った。
「きーちゃん!聞いて!あの赤司くんが!」
「桃っち落ち着いて…」
「居眠りしてたって……!!」
まるでデジャヴュ。さっきの桃ちゃんが黄瀬くんに移ったよう。ぴしりと固まった黄瀬涼太。黄瀬くんは驚いて何も言えないようだけど。つーかみんな赤司にどんなイメージ持ってんだ。
「赤司ってそんな完璧なイメージがあるの?」
「完璧なんてそんなもんじゃないっス!なんつーかもう神っスよ!」
「うん!!」
黄瀬くんの熱弁に深く頷く桃ちゃん。神ってなに。
「…桃ちゃん、バスケ見学してっていい?」
「え、うん、いいけど」
「君達の言う、神を見たくなった」
赤司がバスケをやる姿を見るのは正直初めてで、桃ちゃんと黄瀬くんのいう神な赤司がどこにいるのかは分からなかったけど、まあかっこいいとは思った。
しらないこと
(ノートありがとう)
(はーい)
(それよりあいつらに何言ったの)
(……別に)