「もっ、もももももも」
「ど、どうしたの?」


私の名字の頭文字であろう桃井『も』を連呼する彼女はこの世の物ではない形相で震えていた。


「桃ちゃんの幼馴染み怖い!!」
「えっ!大ちゃんなんかしたの!?」
「なんかしたどこじゃな…!!」


彼女の口から幼馴染みという単語が出た事に過剰反応して、思わず昔の呼び方をしてしまったが、それよりも彼女の言葉の語尾が弱々しくなるのと、ゆでダコのように顔が赤く染まる彼女に私は驚きを隠せない。


「えっ、ほんとにどうしたの…?」
「あああおみねくん」
「落ち着いて、ねっ?」


私の言葉にうんと小さく頷く彼女。さっきより落ち着いたのか顔の赤さも少しだけ引いた様に見えた。


「で?どうしたの?」
「青峰くんが、」
「俺がどうしたって?」
「ひゃあああああああ」


そう聞こえた声と、背後に現れた本人に彼女は跳び跳ねるように逃げ去ってしまった。


「大ちゃん、何言ったの」
「別に、次の試合赤司のノルマ倍で越えたらキスしろ、って言っただけだぜ」
「だけだぜ、って……」


私は幼馴染みの馬鹿さ加減に思わずため息をついた。


愛するためのノルマ
(赤司くん!)
(なに?)
(次の試合のノルマ一人15にしよ!!)
(ああ、いいよ)



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