黄瀬涼太という男は、単純である。
「ぎゅー」
「はいはいぎゅー」
「あー、癒されるっス…」
「ならよかった」
私はただのマネージャーで、彼はキセキの世代の一人で、きっとバスケがなかったら関わってなんかなかったと思う。世界って狭いなあ、なんて。元々帝光中は強かったけれど、そこに100年?に一人の逸材が5人も集まったって言うんだから怖いんだよなあ。
「黄瀬くん、赤司くん睨んでるよ」
「もーちょっと」
「練習十倍って顔してるから早く行った方がいいんじゃない?」
「行ってくるっス!!」
「行ってらっしゃい」
そう言った私を、赤司くんが睨んでいるのを私はちゃんと知っている。さっきのも黄瀬くんを睨んでたんじゃなくて、私を睨んでいた。それはきっと彼の独占欲。
だから私は黄瀬涼太を放してやらない。
「なまえっちー」
「はいはい」
「ぎゅー」
「ぎゅー」
「ねえ黄瀬くん」
「なんスか?」
「私にも補充させてよ」
そう肩に顔を埋める黄瀬くんの顔をぐいっと無理矢理目が合うようにしてその綺麗な唇にキスをした。
「なななにしてるんスか」
「いつも黄瀬くんばっかりずるいと思って」
痛いくらいの視線を感じた。きっと赤い目が私を睨んでる。それでも私に映るのは黄色だけ、黄色に写るのも、私だけ。
「ね、黄瀬くん」
その瞳に映すのはわたしだけでいい
(世界で最大級の独占欲)