その、なんでも見透かす目を私は欲して、手を伸ばした。

気抜いてるからだよ。後ろから迫った私に彼は気付かなかった。目潰しする勢いで触れた手に彼は思わず目を閉じた。最初に触れたのはその肌身の温かさ。目を瞑るなんて百も承知。私はそのまま手を押し込んだ。

ごめんね。私は抵抗しないように彼の頭を片手で抑え込んだ。ぐ、と言ったくぐもった彼の声が響く。ねえどんな気持ち?次に触れたのは微かな滑りをもった、私が一番望んだそれ。

彼の顔が痛みに歪む。どんな顔しても綺麗だねえ君は。なんて。誰も助けにこないね、葉山先輩も実渕先輩も根部谷先輩も。するりと彼の目は私を飲み込んでいく。

ぷちん、とそんな小気味良い音を手から感じて。彼の顔はより酷く痛みに歪んだ。つー、と彼の目から血が流れる。血の涙見たい。それを見て声を上げたのは実渕先輩。


「な、なにやってるのよ!」


大きな彼の力で私は彼から引き剥がされる。私は思わず尻餅をついて、それをぺろりと舐めた。


「ねえ赤司くん、私の目、あげるよ」


ぷちりと抜いたそれを彼の、空になった目に入れた。


これで世界が見たかったの
(結局世界は真っ暗なまま)



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