私をもう、愛さないでほしい。そう言った私に彼は何故だと言った。
あなたはこれから立派な人になるでしょう。今よりもずっとずっとすごい人に。そんなあなたの隣を歩くのは拷問でしかないの、苦痛でしかないの。あなたは同じ場所を歩かない、それに比べて私は同じ場所しか歩けない。分かるでしょう、頭のいいあなたなら。こうやって、嫌味みたいにあなたに偏見を持って、あなたに後ろめたさを感じて、分かるでしょう、頭のいいあなたなら。
「愛さないで」
「…なぜ」
「私はもうあなたを愛せない」
自分の非力をあなたのせいにして、あなたから逃げるのは、酷く簡単なことだった。
おびれをなくしたさかな
(ごめんね)