私は少しばかり短い人生を終えて天国へ逝った。対した未練はないが、結局最期まで誰かと添い遂げることはなかったな、と思う。愛した人に何かを迫られても、どうしても、違うと思ってしまう。それが愛とか恋とか、私は分からず仕舞いなのだが。

中学三年、受験の時期丁度に私は思春期を味わい酷い反抗期を迎えた。両親の顔を見るのが嫌で同じ空気を吸うのすら嫌だった。そんな私は寮のある陽泉高校を選んだ。私立を選んだのも親に大きな負担をかけるという反抗心からであった。今思うと最低である。陽泉高校は室内の運動部に手をかけていて、わざわざこんな私立に入ったんだからという思いもあり私はバスケ部に入部した。めっきり初心者であった私が陽泉高校のバスケについていけるはずもなく、落胆した。そんな時出会ったのがあの男だった。


「やめるの?」
「え?」


第一印象はとりあえずでかい。紫色の髪におかしをぼりぼりと貪る男、バスケ部では有名だった。紫原敦。


「部活、やめるの?」
「あー、うん。どうしようかなあって」
「だったらさ、マネージャーやってよ」
「は?」
「まさ子ちんも欲しいっつってたし、いいよね」
「まさ?、え?」
「じゃあ決定ね〜」
「え、ちょっと」


流されて決定して、何だかんだで次の日男子バスケ部のマネージャーをしていた。女子の練習メニューも相当ハードだが男子のはそれの倍だった。マネージャーの仕事をしているだけでぐったりしてしまった初日。どうにか男子の練習に馴れた頃には、何故か私は紫原と付き合っていた。訳も分からずキスをして男女のする営みを交わし、結局卒業まで付き合っていた。なんでもかんでも彼に流されてると気付いた私は、彼を傷付けることを承知で別れを切り出した。


「知ってたよそんなこと」
「じゃあなんで」
「なまえちんのこと好きだから」
「でも私は」
「うん、だからさよなら」


始まりもよくわからなければ終わりもよくわからないまま。それから私は紫原がどうなったのかも知らない。それは無意識に紫原を避けていたからかもしれない。本当は好きだった、今なら正直に言える。私は紫原が好きなのだ。だからどうしても、誰とも一緒にはなれなかった。


「なまえちん」
「え?」


足を踏み入れたそこにはあの時と変わらない声色で私の名前を呼ぶあいつがいた。姿もあの時のまま、気付けば私もあの時の姿に戻っていた。


「遅いよ〜待ってたんだよ〜」
「え、ごめん」
「まー会えたからいっか」
「天国なの、ここ」
「そうだよ〜、てかなまえちんは俺に言うことない?」
「…言うこと?」
「好きだーとか」
「自分で言ってんじゃない」
「なまえちんの声で聞かせてよ」
「好きだよ、紫原」
「知ってたよ」


彼の、あの時と変わらない姿が私を抱き締めた。私はここで、彼と歳老いていくのだろうか。


青春をもう一度だけ
(恋しているということ)



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テーマ「人外ファンタジー」
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