彼はどうして僕が見えるのかと言った。私は迷わず私が貴方を好きだからと言った。それならどうして僕には君が見えないのかと彼は泣いた。私は迷わず貴方が生きているからと、こたえた。


「綺麗な水色ね」
「え?」
「髪」
「え、ああ、ありがとうございます」
「貴方のお友達も、綺麗な色してるわよね」
「そうですね」


私が初めて彼に声をかけた。最初こそ驚きはしていたけど、二言目には他人同士の会話になった。私がああいうと彼は簡単に相槌をうつ。話しかけるのはいつも私から、話しを振るのも私から。それがいつしか当たり前になった頃、彼は初めて私を褒めた。


「貴女も綺麗な黒です」
「え?」
「髪」
「髪?…ああ、ありがと」


特別自分の髪が綺麗だと思った事などない。彼の色を、彼等の色を見てると余計そう思う。他と同じ黒、何度か染めてしまおうかと思いはしたが、これが私の色なら仕方ない。


「好きですよ、貴女の色」
「私も好きだよ、貴方の色」


貴方が好きだというなら、私はこの色を愛せるだろう。でも、これは個性ではないから。



「……なんで」


突然に死んだ、と聞かされた。死とは僕にとって程遠いものであって。それでもいつか自分自身で経験するものだと、そんな。

隣のクラスの女子が事故に遭ったと黄瀬くんが、かわいそッスね…と。僕も最初はさほど興味はなかったが、黄瀬くんが次に発した言葉で気が狂いそうになった。


「黒子っち、仲良かったッスよね?」
「…え」


考えるより身体が動いた。人混みを掻き分ける背中が鬱陶しくて。彼女のクラスに着いた時には何故か肩で息をするような感覚で、嘘であって欲しいと、そう、


『綺麗な水色ね』
「え?」


彼女の居ない世界で彼女の声がするのは、ただの幻聴なのか、それが違うと分かった時には、生きていることすら疎ましくなった。


みえますか
(わたしのこえが、)



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