俺が彼女と出会ったのは、母さんと姉さんからのお使いの帰りだった。お使いの内容は実に下らないもので、始まりは姉のプリンが食べたいからだった。それに母が乗っかり、アイスやらシュークリームやらなんやらで片手にぶら下げる袋は結構な重みを含んでいる。そんな時だった。ぐすんぐすんという、泣き声。やはり女兄弟に囲まれてるだけあってそういうのは敏感であり、第一に夜遅くに何をやっているんだという不審感が少なからずあった。


「あの大丈夫ですか?」


女の人だったそれに不審のないよう声をかければ彼女の肩は大きく揺れた。


「えっ、あっ」


彼女の涙に濡れる大きな瞳が俺を写す、刹那俺の中に何かが芽生えた。その時咄嗟に言った下らないダジャレは覚えていない。初めてダジャレを言う自分を恥ずかしくも誇らしくも思ってしまったからだ。


「ぷっ、…」
「えっ」
「あ、ごめんなさい、面白くって。ぷ、っあはは」


それから彼女は涙を忘れる程俺のダジャレで笑っていた。誰も笑わない俺のダジャレを笑ってくれることを少なからず喜んでいた。もう買ったアイスは溶けきっていた。



「ってわけだ、日向!良い話しだろ?」
「あー、うん、そうだねー」

「俊くん!」
「なまえ!、じゃあな日向」
「おー」


駄洒落を言う伊月もそれなりにうざいが、彼女ののろけを言う伊月はそれ以上に殴りたいな、と思う日向だった。


深夜のセレモニー
(こんな夜には乾杯しましょう)



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