何かが割れるような音と共に何かを踏んだ。それはしっかりと右足が捉えていた。


「あ」
「あ」


私と誰かの声が重なる。それは本当に気の抜けた声だった。それと同時に私は自分の右足を上げるのが嫌になった。踏んでしまったそれは壊れているから。


「ご、ごごごめんなさい」
「………いや」
「っぷ…!あっはははは!!」


それは可愛いうさぎのキーホルダーだった。プラスチック製の小さい。粉々とまでは行かないが、私の見える範囲では耳が折れ腕がもげ、顔が汚く潰れているという、可愛いうさぎの跡形もない状態だった。それを黙視する男と、隣で大爆笑する男。そしてどうしようもない私。…穴があったら入りたい。


「ごめんなさいっ、あの、ちゃんと弁償します」
「いや、いいのだよ」
「ほんっと12位だと運勢わりーな!!どうすんの、唯一の救いのラッキーアイテムも無くして、今日、真ちゃん死ぬんじゃね?」


凄い温度差で喋る男の人。見るからにそのラッキーアイテムというこのうさぎのキーホルダーが壊れた事を喜んでいるようにしか見えない。


「少し黙るのだよ、高尾」「あ、あの、うさぎのキーホルダーだったら、代わりになりますか?」
「は?」


不意をつかれたような顔をする男の人を無視して、私は携帯にぶら下がったキーホルダーを一つ外した。人差し指サイズのバスケットボールを胸に抱えたうさぎのキーホルダー。雑貨屋で一目惚れして買ったのはまだ新しい記憶。


「代わりになるなら」
「いや、」
「貰っとけよ真ちゃん。ほんとにこのままだとやばいって、後で返しゃあいいんだしよ」


テンションの違う彼の言葉が救いに思えた。これを受けとって貰えれば私も少しは救われるのだ。私はもう一度念を押すように腕を伸ばした。


「…だが」
「弁償はちゃんとしますから!…それじゃあ!」


このままじゃキリがないと思った私は自分のキーホルダーを押し付けてその場を後にした。


「中々可愛いこだったな」
「高尾」
「色んな意味でラッキーだったんじゃね?」
「高尾!」


ブレイキングラバー!
(すくって!おねがい!)



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