私の知ってる彼が、スポーツを楽しまなくなったのは小学3年の頃だった。
「…もういいや」
「えっ、ちょっと敦!」
野球にサッカー、テニスにバレー。お母さんに褒められて笑ってた敦はいなくなって、小学4年の時には、彼はもう、独りだった。あいつとやっても楽しくない、そんなのを耳にした。それは敦も同じだと思う、とは言えなくて。それから一年、小学5年の時にはもう、私の知ってる敦は居なかった。
好きだからやってるんじゃなくて、楽しいからやってるんじゃなくて、じゃあなんでやってるの、って聞かれたら私には分からないけど、敦はきっと、今だけだよ、と笑うんだろう。それでも私は、バスケをしてる時の敦だけは輝いて見えた、少しだけ笑ってるように見えた。中学校に上がって久しぶりに敦と帰った。やっぱりバスケを続けているみたいで、彼の噂は耳にしていた。自分の周りは強いやつばかり居るんだと笑う。それから敦が、キセキの世代と呼ばれるようになって、私は、本当に彼を知らなくなった。
本当は最初から知らなかったのかもしれない。スポーツを楽しんでたのも全部嘘で、知ってるつもりで知らなくて。本当はスポーツをしてる敦が大嫌いだったってことも、
「一緒に、来てくれる?」
空中ブランコ
(どの手を掴めば)