それを見て私に勝ち目なんかないって。
「僕、好きな人できた」
「……え?」
そりゃあもうショックだった。幼なじみの新羅を物心ついたときからずっーと好きだった私にとっては破壊力は万全で。だけど、少しだけ、その好きな人って自分かなって自惚れたりもしたけど、そんなこと考えた自分が馬鹿だってこともすぐ分かった。
「新羅のさ、好きな人って首無いんだってね」
「は?」
新羅の幼なじみで、私の幼なじみの臨也は、人間が好きで、情報をいろいろ持ってて、だからそれが嘘ではないことは分かっていた。けれど余りにも信じがたい。それでも臨也は楽しそうに言う。
「首、無いの」
そりゃあ新羅が好きになるわけだ。新羅は森厳さん譲りの実験好きなのだから。それを知っていながら、私は馬鹿だった。
「見に行く気?」
「うん」
「物好き」
「臨也には言われたくない」
だって、見に行きたい。見たい。知りたい。私が愛した新羅が愛した人。インターフォンが、私の耳をつんざいた。
靴も履かずに逃げ出した
(脱いでもないけども)