お腹の中に命が宿りましたよ。なんて、遠回しにそう言われたのは一週間前。任務でぶっ倒れた私に、下っ端達が病院に行けと五月蝿かったから行ったらあれだ。外科でもない内科でもない、だから病気じゃないのよ、最後の最後に残った産婦人科。死にたくなった。これだけは、それだけはあっては成らないと。エコーがお腹を見透かして、そしたら医者が笑うから。世紀末よ、本当に。出来ちゃったお腹の中の子には申し訳ないけど、今この任務で死んでいいかな。少し気抜けば私の心臓をきっと敵の銃弾が貫いてくれると思うの。それなのに、私の身体はどうして言う事聞いてくれないのかな、どうしても身体が動くの、私こんな生に執着してたかな。それとも小さな命を抱いてるからかな。前者も後者も認めたくないわね。因みに医者には安静をお勧めされたわ、母子ともに負担がかかるから、一回倒れた身なんだから、と。だけど私が今ここに血塗れて立ってるって事は誰にも言ってないわけ、子供が出来たなんて。心配していた下っ端にも体調不良だと嘘をついたし、幹部の面々にも寝不足だと言ったし、この子供の父親であろう本人にも伝えてはいない。もしかしたら怖いのかもしれない
、出来たと伝えて拒絶されるんではないかと。正直自分も出来ないなら出来ないで良かった。でも出来ちゃったんだから仕方ない、この命に罪はないわけで、私が勝手に奪うのはそれこそ罪だと思う。なんて人殺しが何言ってんだろ。こんなんじゃ本当に親じゃないの。わかんないわかんないけど、きっと愛が生まれてるのは間違いじゃない。私がこう思えるなら、あいつも笑ってくれるかな。そうだといいな。


子は三界の首枷
(あなたへの愛で束縛される)



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