今日は雪が降っていた。1メートルと降り積もった雪は自分の胸元ぐらいまである。お兄ちゃん、寒いよ。私は小さく問いかけた。それでも兄からの返事はなかった。私の世界は真っ白で銀世界だ、今にもシャンシャンと鈴の音と赤い姿が、と考えかけて止めた。はあ、と息を吐けばそれは白く空に消えて行く。白に霞んで赤が見える、そう、足りないのはシャンシャンという鈴の音だけ。鈴の音だけが足りない。足りないんだよお兄ちゃん。私は小さく言った。今日は雪が降っていた。降り積もった雪は私の肩の高さぐらいまである。横を向いても白くてまるで異世界に一人取り残された気分に苛まれる。涙が出そうで笑みをこぼした。首に巻いたマフラーも手を包む手袋もまるで別次元のようだ。お兄ちゃん、お兄ちゃん、冬が恋しいって言ってたよね。赤に染まるマフラーを赤く染まった手袋を捨てるように放り投げた。露になった肌色から一瞬にして熱を奪われていく。お兄ちゃん、私、冬は嫌い。今日は雪が降っていた。降り積もった雪は私の頭の上まである。下から上まで真っ白、だったのはついさっきまで。私はその感覚の失った小さな両手で雪を掻き分けた。兄の上に細かい粉砂糖のような白い雪がバサァと音を立てて落ちる。みるみるうちに赤は見えなくなった。今日は雪が降っていた。降っていた雪は止んで今は私の腰あたりまである。感覚が無くなってまるで壊死したような手のひらに息を吐く。手のひらはじんわりと温もりを持っては冷めていく。吐いた息は白くなって空へと消えた。今日は寒いね。私の世界は銀世界で赤い姿と鈴の音が、と考えて止めた。私の小さな足音がシャンシャンと音を立てていく。赤が足りない。赤だけが足りない。私の小さな足音がシャンシャンと音を立てていた。



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