アサギ→タンバ





灯台を出た私は、早速ポケセンへ行きみんなを回復させた。時計をみると17時。がんばれば今日中にはタンバにつけるかな…。よし!頑張ろう!



ポケセンを出て、ポケギアでタンバへの道を確認しながら西へ西へ。何だか、地図が読めないというか、それは違くて、嫌な予感しかしない。どうか、違いますように…!
祈りに祈りながら進んでいくがついに行き止まりともいえる所まで着いてしまった。
やはり、そうだったか…。
今、私の目の前に広がるのは大きな海。


「海渡らなきゃタンバいけないなんて知らなかったよーう!!!」


一人でいるのに、思わず心の声が思いっきり漏れる。私は、みずポケモンを仲間にしていない。
せっかくエンジュのおじさまになみのりのひでんマシンをもらい、マツバさんに勝つ事によってそれを使いこなせるところまでいったのに。どうしよう。こんなうだうだしている間も、アカリちゃんは苦しんでいるんだ。私に残された選択肢は一つしかない。




海も目の前ということで砂浜には有難く更衣室があった。コガネのデパートで買った水着を纏い、浮き輪を膨らませる。

タンバまでどれくらいあるのかは未知だけど、自力で泳いでいくしかない!気合いよ!!
後ろについていたイーブイはそれを察したのか心配そうな眼差しを私に向けた。


「大丈夫よ!私、水泳は苦手ではないし、アカリちゃんの苦しみに比べたら、泳いでいくなんてなんのそのよ!」

「ブイイ…」

イーブイは少し眉を下げて困ったような悩んでるような顔をしていたが、そんな下がり眉がくいっと逆方向になって私のリュックの中に入っていった。

きずぐすり、モンスターボール、きのみ、技マシン…どんどんでてくる道具達。

「イーブイ、何を探しているの?」



イーブイはようやくお目当のものを見つけたようだ。ん…あれは何だ…?あれは、確か…!



と、考えるのもつかの間、イーブイの身体が強い強い光で包まれた。とても美しい、水色の光。その光はどんどん薄くなっていき、消えたその先に居たのはイーブイではなかった。今までの可愛らしい外見とは全く対照的な美しい姿。


「シャワーズ…!」

「シャァ」

イーブイがシャワーズになった事をしっかり理解できた瞬間。涙が溢れ出てきて、シャワーズを思いっきり抱きしめた。



「ありがとう…!シャワーズ!!」


みずのいしで進化するシャワーズ。コトネちゃんがくれた石はみずのいしだったんだ。

イーブイを仲間にした時、イーブイの5種類の進化の事を勉強した。どの進化形も魅力的だったが、何になるかは私が決める問題ではない。本人の意思が大事だと思って、イーブイの進化形の乗った本を読んで聞かせて見せた。

イーブイはどれになりたいの?と聞くと、イーブイは迷わずエーフィというエスパータイプの進化形を指した。その後、ポケセンなどで見るテレビででてくるエーフィを見るなり、イーブイは目をキラキラさせていて、いつか必ずイーブイをエーフィにする事を決めたのだ。
コトネちゃんがこの石をくれた時、進化が何とかと言っていたのを今思い出した。
でも、イーブイ、いや、シャワーズは分かってたんだね。それが進化の石で、みずのいしだったって事も。

自分の成りたい姿を諦め、シャワーズは私の力になる為にこの道を選んでくれたのだ。


「私、シャワーズの事、大好きだよ。これから沢山美しい水の技を覚えて、強くなろうね!」

「シャー!」

シャワーズはわたしのの頬に自分の頬を擦り寄せてきた。私は、幸せな嬉し涙を拭い、早速シャワーズにさっそくなみのりを覚えさせた。







早速波乗り開始だ。シャワーズはそんなに大きい方ではないから、けっこう水に浸っている。最初は寒かったが、どんどん慣れていった。

ポケギアで位置を確認しながら、シャワーズに方向の指示を出しどんどん進む。
結構トレーナーが沢山いて、みんな勝負を仕掛けてくるが、この状態でバトルなんかできるわけないやろー!!!!!と、突っ込みたい。私は水ポケモンのエキスパートではないのだ。

そして、男の人に声をかけられる事もしばしば。いわゆるナンパというやつだ。しかし、その度にシャワーズが威嚇して逃げていくのだった。シャワーズ、頼もしすぎる…!!



「あの…」


後方からまた男性の声。海ってどんだけその手の男が多いのよ!振り返った瞬間シャワーズがさっそくみずてっぽうらしきものを相手に発射した。


「っ!?バブルこうせん!」


そんな記念すべきの初みずてっぽう?もあっけらかんとバブルこうせんに打ち消された。こちらにダメージは全くこなかった。なんの配慮だ…



「やっぱりナマエか!もう、いきなり攻撃とか酷いじゃないか!」

一瞬口を尖らせたが、ニカッと笑う爽やかすぎる笑顔。


「ヒ、ヒビキくんだったの!?ごめんね…!」

「いや、海は危ない男が多いからな。それ位の用心が大切だと思う。ナマエは可愛いし…あ、えっと…」

そう話しつつ改めて私をまじまじみるヒビキくんに、何だか赤面せざる負えない。そんなヒビキくんも、何故か私とおんなじ顔のような気がするが。


「ナマエ…いつの間にそんなに成長したの…」

「え、何が…?あ、シャワーズ?さっきね



マリルが進化したであろうマリルリが、くるっと回ってヒビキくんに向き合うとさっきより少し弱めなバブルこうせんを発射した。え、何で?



「マリルリ…!ごめん、というかありがとう…!」


え、何で?顔面バブルこうせんでありがとうってヒビキくんまさかのドM…いや、どんなヒビキくんでもヒビキくんはヒビキくんで、優しくて私の大好きなヒビキくんだから、別に、引いてなんか…!


「ナマエ…その格好は、なんだよ…。」

顔面バブルこうせんをくらって冷静に、なったんだか何だか、いきなりヒビキくんの声のトーンが低くなった。

「なんだよって…水着だけど…?」

「そんなの見れば分かるよ。」

「えっ…」

「…もっと露出少ないのにしろよ。スポーツウェアとかさ。それ、遊び用の水着だよね?誰かと海水浴でもいく約束でもしてたの?」

「えっ…ごめん…遊ぶ約束は…してない。」


旅を許して貰える年になり、何だか大人な気分を味わいたくて密かに憧れていたビキニを買ってしまったが、ヒビキくんは気分が悪いようだ。確かに、そんなスタイル良いわけじゃないので、無理があったのか。でも、あからさまにあんな顔するなんて、酷い!


「なんでそんな声、震えてるんだよ。嘘なのか?まさか、シルバーってやつと…」

何とか忘れていたシルバーという存在。私の水着姿を見て気分の悪くなってしまった不機嫌なヒビキくんと、シルバーとの事、色々混ざり合って泣きそうになる。


「そんなわけ、ないでしょっ…」


絞り出した声で、それだけ告げると、ヒビキくんは我に返ったように、優しく、困った顔になった。

「ごめんナマエ!そんな顔させるつもりはなかったんだよ…疑ってごめんな。」

いつも通りの、優しい優しいヒビキくんの声。


「うわあぁああヒビキくんんん!!!!」


いてもたってもいられなく、シャワーズから飛び降りてヒビキくんに抱きついた。上半身裸のヒビキくんに、こんな薄い布一枚纏っている下着同然の私が抱きついているってそんな恥ずかしい事、何も考えられない位、シルバーとの事が悲しくて、ヒビキくんの優しい声に落ち着いて、ひたすらぎゅーっと抱きしめたが当たり前のように私達は沈んでいった。それを救助するシャワーズとマリルリ。こんなトレーナーでごめんなさい。


と、こんな事をしている場合ではなかった。私は本来の目的を思い出し、我に帰る。ヒビキくんはマリルリの上で何故か気絶していたので、マリルリに行き先を聞くとタンバシティとの事だったので、一緒に向かう事にした。

しばらくするとヒビキくんが気を取り戻し、いままでの旅の話、私のこれからの目的の話をした。ヒビキくんはもうアサギジムではバッチを手にいれており、これからタンバジムに挑戦するらしい。何となく、シルバーと喧嘩した話を聞いては欲しかったが、話さないでおいた。








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