初めての別れ



育て屋さん到着。

ガチャッーーー


「こんにちは〜!」
「おお、ナマエちゃん!もう来たのかね。」
「はい、少し早かったですかね…!?」



タンバジムまでまだまだ長いし、鳥ポケモンもまだ仲間にできてないから歩ける距離の内に迎えにきてしまったのだけど、、、



「いやいや、いいんじゃよ。わしらとしてはもっと育ててあげたかったのと、トゲピーともうお別れなのが少し寂しいだけじゃよ。でものう、お前さんのトゲピーは、他のポケモンよりも自分から何でも進んでチャレンジして、どんどん強くなったんじゃ。とても育て甲斐があったよ。」
「そうなんですか…!確かにトゲピーは、産まれた時から何でも恐れずにチャレンジする子でして…本当に、ありがとうございます!」


そんなトゲピーに何度も助けられた。やっぱりトゲピーは凄いや。これから一緒に旅をするのは楽しみだし、なんだがドキドキする。



「そうじゃったか。いやしかしな、お礼を言うのはわしらの方なんじゃ。実はのう、ナマエちゃんがトゲピーを預けた次の日、復活したらしいロケット団がこの育て屋に入ってきて、預かっているポケモン達を盗もうとしたんじゃ。その時いたポケモン達はみんなまだバトル経験がない子達でのう、みんなが怖がったのをトゲピーが立ち向かって、見事倒したのじゃ!」
「ええっ!!そんな事があったんですか!?ロケット団…許せない……!!」


ロケット団、育て屋さんまで狙うなんて。そしてそれに1人で立ち向かうとか、もうほんと凄いよ流石だよトゲピーよ。


ん…?でもそれって…



「トゲピーが居なくなってからも、狙ってくる可能性はあるんでしょうか……?」
「なくはないんじゃろうが、ちゃんは心配せんで大丈夫じゃよ!わしらは育てのプロなんじゃからの!」
「でも……。」
「すまんすまん。心配させるつもりはなかったんじゃ!!ただ、お礼が言いたかっただけなんじゃよ。今、トゲピーを連れてくるから少し待ってての!」
「は、はい。」


心配させるつもりはなかったのはもちろん分かる。でも、実際トゲピーが居なかったらどうなってたんだろう…とか考えていると、トゲピーがテコテコ歩いてくるのが見えてきた。




「トゲトゲ!」
「トゲピー!少し久しぶりね!元気そうでなにより!ロケット団の話は聞いたよ!さすがねトゲピー!」


トゲピーをぎゅっと抱きしめる。何となく身体つきがたくましくなったように感じた。なんとなーく、だけどね。



「とにかく、ナマエちゃんのトゲピーには本当に助けられたんじゃ。だから料金はいらんよ。」
「えっいや!そんな、申し訳ないです!」
「むしろもっとお礼をしたいぐらいじゃ。さぁ、もうすぐ暗くなる時間じゃよ。夜になる前にコガネには着いてた方がいいじゃろう。気をつけてお行き。」

何てお優しいおばあちゃんなんだ…!感動で目がうるうるしてくる。


「ありがとうございます…!ではお言葉に甘えさせていただきますね。それでは失礼いたします。行くよ、トゲピー!」
「トゲ…!」
「えっ…トゲピー、何で来ないの?」



私は既にカウンターから数歩進んだが、トゲピーは着いてこないで立ち止まっている。


「トゲトゲ!トゲ!」


トゲピーは一生懸命私に何かを伝えている。
んん、もしかして…


「トゲピー…ここに残って、みんなを守るの?」
「トゲ!」


トゲピーは強い眼差しで頷いた。


「そう……残念だけど、トゲピーが決めたなら止めないよ。前から止めたところで聞くような子じゃないものね。ちゃんと…もっと強くなって、ここを守ってね!」
「トゲ!!!」


本当は今にも泣きそうだ。でも、ここで泣いてはいけないような気がして、ぐっと堪えた。


「おばあさん、トゲピーをもっと預かって頂いても大丈夫ですか?」
「それは全然構わんのじゃが、いいのかね?」
「はい!それではお世話になります。トゲピーに何かあったら連絡して下さいね。」
「もちろんじゃよ。ナマエちゃん、本当にありがとう。」
「いえいえ。」
「何かお礼がしたいのじゃがのう……あっ、ちょっと待ってての!」





おばあさんは奥の部屋から何かを取り出してきた。



「あったあった。良かった良かった。ほれ、これをプレゼントするよ。カントー地方の夫婦カップル向けの旅行券じゃ。何かの抽選で当たったんじゃがのう、わしらはもうそこまでいく元気も暇もないんじゃ。」
「えっ!いいんですか…嬉しいですけど、私そうゆう相手居ないんですけどね。」
「ほほっ、ナマエちゃんももう年頃なんじゃから、好きな相手ぐらい本当はいるんじゃろ?孫のヒビキだっているしの。ほほほっ」


え……!ヒビキくんいるの!?聞いてないよ…!!



「ヒビキくん、いるんですか…!」
「ほほっ、まだどうやら相手には伝えてないようじゃがの。まぁそれはさておき、本当に好きな相手が出来たら、是非これを使っての。トレーナーが少し貯金したくらいじゃいけないとこじゃからな!」
「は、はい!ありがとうございます!大切に使わせて頂きます。それではよろしくお願いしますね。



じゃぁね、トゲピー元気でね…!」
「トゲ!」



トゲピーは胸に手をあてて得意げな顔をしている。そんなトゲピーを見ていたらまた泣きそうになってしまったので、そそくさ育て屋を出た。




トゲピー。短い間しか一緒に旅をしてないけど、とても楽しかったよ。自我が強いところもあるけど、そんなあなたの強い心に何度も助けられた。
ロケット団も動き出したし、これからの旅路で挫けそうになる時とか、怖くて前に進めない時がきっとあるんだろうなぁ。でも、そんな時あなたを思い出して私は頑張るね。



















カップル向け旅行券か…本当に好きになった相手と、行けたら幸せだな。
何故かは分からないが、ヒビキくんとシルバー、ふたりの顔が頭に浮かんだ。
何でこのふたりが頭に浮かぶのよ…!!






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