エンジュシティ1



やけたとうを出て、エンジュジムに向かっているとポケセンセンターからシルバーが出てくるのが見えた。


「シルバー!」


私が声をかけた瞬間シルバーは顔をしかめたが、負けずにシルバーに近寄った。


「あれからすぐにポケセンで回復させたんだ!やっぱりシルバーは、ポケモン達を大切にしてるんだね。」
「‥っ!違う!早く回復させなきゃ弱いのが更に弱くなるからな‥!」
「そう、なの‥。」
「それよりお前、やっぱり伝説のポケモン捕まえられなかったんだろう?」
「いや、あそこにはマツバさんを探しに行っただけであって、元々伝説のポケモンが居るなんて知らなかったし捕まえる気なんてなかったよ。」


そう言うとシルバーはもの凄い驚いた顔をした後に俯いてしまった。


「そうなのか‥。何か、勘違いしちまって‥悪かったよ‥」
「ううん、分かってくれればいいの!」


シルバーが私の事を少しでも理解してくれたと思うと本当に嬉しくて、つい綻んでしまう。シルバーはそんな私の顔をまじまじと見始めた。そんな見られると照れるんですけど‥。


「ナマエ‥、今日何か違うな。」
「へ?‥‥あぁ!今日はちょっとメイクしてみたんだけど‥どう?可愛いー?」


ちょっとふざけた口調で聞いてみると、シルバーはあわあわし始めて、悩んだ顔をしている。一応、言葉を選んでくれるのかな?


「か、可もなく不可もなくだ!」
「何それー。そうゆう時はね、冗談でも可愛いってゆーの!!」
「別にお前はそんな事しなくてもかわ‥あ!」
「‥‥!」
「ち、違!今のは、あれだ!あれ‥‥‥えっと‥」

予想外の発言に言葉が出ない。今、可愛いって言おうとしたよね?!可愛いって。そうだよね?!
私達は同じタイミングで顔をみるみる赤らめていく。



「ナマエちゃん‥?」

そんな私達の気まずい雰囲気を壊すように、新たな人物の声が響いた。後ろを振り返ると、ヒビキくんの姿が。でも、顔が物凄く怖い、気がする。


「ヒビキくん‥。」
「隣に居る奴‥研究所を覗いてた奴だよな?」


そうか‥すっかり忘れてた!ヒビキくんの顔が怖いのも無理はないだろう。ヒビキくんはシルバーの後ろに着いているマグマラシを見ると、もの凄く鋭い目でシルバーを睨んだ。


「やっぱり。お前、よくも僕のヒノアラシを‥!」
「フン、お前が研究所に追いていったのが悪いんだろう?」
「ポケモンを盗んでおいてその発言‥許せない!マリル、ハイドロポ‥」

「駄目!ヒビキくん止めて!」


気付けば私は、大声を出していた。そんな私にヒビキくんもシルバーも目を見開いている。


「シルバーは、悪い人じゃないの‥!確かに、ポケモンを盗んだ事はいけない事。でも、シルバーは‥!」
「ナマエ‥もう止めろ。」
「え‥?」


シルバーは私の言葉を制し、目線をヒビキくんに移した。


「そこの‥ヒビキ、とかいう奴‥‥‥‥‥悪かった。だけど、こうするしかなかったんだ‥。行くぞ、マグマラシ。」
『マグ!』


シルバーはそう言って走り去って行った。

私とヒビキくんの間に痛い沈黙が流れる。あんなにヒノアラシを欲しがっていたヒビキくん。ヒビキくんは正しいのに、私はシルバーをかばってしまった。でも、シルバーは本当に悪い人じゃないから‥どうしたら、分かってくれるんだろう。そんな事を考えていると、ヒビキくんが口を開いた。


「ねぇ。」
「ん‥?」
「‥何で今日、化粧してるんだよ。」
「え、えっとね、それは‥‥‥‥」


マツバさんに挑戦するから気合いを入れた、なんて言えない言えない。しばらく何も言えないでいると、ヒビキくんは俯いた。


「‥どうせ、あいつと会う約束でもしてたからだろ。」
「えっ!違うよ、シルバーにはたまたま会っただけで。」
「‥ふうん。」
やっぱり、もの凄く機嫌が悪い。いつも優しいヒビキくんがこんなに機嫌が悪い事は滅多にない事だ。そんなに怒るのも無理ないけどさ。


「ヒビキくん‥もう一度言うけど、シルバーは悪い人じゃないの。ヒノアラシを盗んだのも、きっと何か理由があったんだと思うの。だから‥」
「ヒノアラシの事はもういいよ、あのマグマラシを見たらちゃんと育てられてる事は分かったし。」


じゃぁ何でそんなに機嫌悪いのよー!そろそろ機嫌直して下さい。早くいつものヒビキくんに戻って‥!


「ナマエ。」
「!?」


いつもとは違う呼び方に、私はとてもビックリした。


「いきなりどうしたの、ヒビキくん!」
「ナマエも‥これからはヒビキでいいから。」
「え!?何で!?」
「何でも。」
「でも、昔からヒビキくんだから、なんか慣れないってゆうか‥。」


私がそう言うと、ヒビキくんはスタスタ歩いて行ってしまう。どうやら余計気分を損ねちゃったらしい。


「待って!ヒビキくん!」


ヒビキくんは振り返りもせず進んで行く。


「ヒビキくん、待ってよー!」


やっぱり振り返ってくれない。あーもう!


「ヒビキ‥!」


私がそう叫んだ瞬間ヒビキくんはやっと足を止めてくれた。そして振り返る瞬間。


「キャー!!」


ある建物から女の人の叫び声が聞こえた。私とヒビキくんは直ぐさまにその建物へと向かった。



[ 29/39 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -