やけたとう



次の日。支度済ませポケモンセンターのロビーまで行くと、女の人と目が合った。


「あなたトレーナー?これからエンジュジムに挑戦するの?」
「あ、はい!そうですよ。」


私がそう言った瞬間、他の女の人達も集まってきた。な、何!?


「マツバさまに会えるなんて羨ましい〜!」
「ああ、マツバさまは素敵だわ!」
「カッコイイ上に、あのクールなところがいいの!」
「それにポケモンもとっても強いんだから!」
「そうなんですか‥!じゃぁ、頑張ってきますね!」


私は何とか女の人の群れから抜ける。エンジュのジムリーダーさん、めちゃめちゃ人気じゃん!そんなにカッコイイんだ。確かアカネも言ってたっけ。んーそんなにカッコイイならちょっとおめかしして行こうかな。って私誰。
結局私はナチュラルメイクをしてポケセンを出た。メイクをしたのなんていつぶりだろうかって位久しぶりだから新鮮だ。よし!ジム戦、頑張るぞー!


エンジュジムに入る。なにここ‥真っ暗。本当にジム!?すると暗闇の中から人影が‥


「ぎゃぁあぁあ!お化けー!!」
「わ、わしはお化けじゃない!」


よく見ると人だ。幽霊じゃなかった‥!


「す、すみません。あの、ジムリーダーさんはいらっしゃいますか?」
「ジムリーダーのマツバは今やけたとうに出掛けとる。すまんがお引き取り願おうかの!」


そう言われて押し返された。幽霊と間違えたんだもの、そりゃ怒るよね‥ごめんなさい。でも、今のジムは幽霊がでもおかしくない雰囲気でしたよ。いや、電気が消えてただけだよね、きっとそうだ。
とりあえずやけたとうに向かいましょう。


やけたとう到着。ほんとに焼けたみたいで床や壁の様々なところがかけている。歩くの、怖いんですけど‥。私は恐る恐る足を踏み出す。

ギシッ―


「きゃぁあぁあ!」

今、ギシッていったよね、ギシッて。床抜けるんじゃない?怖い、半泣き!


「大丈夫かい?」


顔を上げた瞬間、私にはその人が誰だかすぐ分かった。何てカッコイイ人なんだろう。紫色の瞳に、今にも吸い込まれそうだ。この人はきっと、エンジュのジムリーダーに間違いない!


「あ、大丈夫です!ありがとう、ございます!」
「なら良かった。僕はマツバ。エンジュのジムリーダーだよ。君は?」
「わ、私はナマエっていいます。マツバさんに挑戦しに来ました!」
「ナマエちゃん、よろしくね。悪いんだけど今、古い友人のミナキ君がスイクンを探してに来ているのでついでだから一緒にこの塔の事を調べてるんだ。」
「そうなんですか。私、いくらでも待ちます!」


うん、私マツバさんの為ならいくらでも待てるよ、例え一ヶ月、半年‥まではいかないけど。
すると違う人物が近寄って来た。紫色のスーツに白いマント、そして赤い蝶ネクタイ。何この人、マジシャン!?


「私がミナキ。スイクンという名のポケモンを探して旅をしている。君はナマエというのか、よろしく!」
「よろしくお願いします‥!」
「ここにスイクンが居ると聞いてやって来たのだが‥そこの床にあいた穴から地下室を覗いてごらん?」


地下室を覗いて見ると、何と‥テレビで見た事のある伝説のポケモン、スイクンと後2匹、何だっけ‥とにかく凄い!こんな事って有り得るの!?


「わぁ‥凄い!!」
「‥下へ降りて行ってもいいんだが、彼らはすぐにどこかへ走り去ってしまうんだ。私は何度も試しているからね‥。」
「そうなんですか‥。」
「ナマエちゃん、行ってみたらどうかな?君には他にはない何かがある。僕には、見えるんだ‥。」


マツバさんにそんな事言われるなんて‥!行きます、喜んで!!‥僕には見えるって、何が!?ま、いっか。


「じゃ、行って来ますね!」


マツバさんの一言に浮かれながら進むと、床が抜けそうな恐怖なんて忘れていた。しばらく歩くと上機嫌な私の顔とは真逆な恐ろしい顔の人物と目が合う。


「シルバー‥!」
「‥さっきから見てればお前‥‥。」
「な、何よ?」
「‥‥‥‥ああゆうのが、タイプなのか‥?」
「へっ!?」


予想外の質問に思いっきり間抜けな声が出る。ああゆうのって、マツバさんの事?やっぱ顔に出てたのかな、でも‥。


「いや、マツバさんはそうゆうのじゃなくて、憧れってゆうか何てゆうか‥」
「‥はっ!いや、そんな事はどうでもいい!」
「え‥今自分から聞いたよね!?」
「う、煩い!お前、どうせここに現れるという伝説のポケモンを捕まえて自分を強く見せようと思ってるんだろう!?だが、それは無理な話さ。いいか?伝説のポケモンは最強のトレーナーになると誓った俺にこそ似合うんだ!」



シルバーは勝負を仕掛けてきた。勝敗はぎりぎりのところで私の勝ち。ゴースにのろいを2回も出させなければきっとシルバーが勝ってただろうに‥。


「何故だ‥っ!お前、俺が手加減してやってんの分かんないのか?」


シルバーはそう言って走り去ってしまった。追いかけようと思ったが、私はマツバさんに地下室へ行ってみると言ったのを思い出した。とりあえず、地下室に行こう。

私が梯子を下って地下室に着いた瞬間、スイクン以外の2匹はすぐどこかへ逃げてしまった。しかしスイクンは私の目の前に立ち、しばらく私を見てから逃げていった。何だろう、感動で言葉が出ない。
すると、ミナキさんとマツバさんが地下室に降りてきた。


「見ただろう?目の前をもの凄い勢いでスイクンがかけていった!かれこれ10年近くスイクンを追いかけてきたが、こんなに近くでスイクンを見たのは初めてだ!感動だぜ!」
「じゅ、10年‥!私も感動しました!」
「僕がみた通り‥スイクンは明らかに君の事を意識していたな。そして僕も君の事を意識し始めた。」
「へ、へぇっ!?」
「‥マツバ!ナマエ、マツバには気をつけるように!」
「ミナキくん!ナマエちゃん、僕は何もしないから大丈夫だよ。」
「は、はぁ。」
「‥まぁいい、今後は私も君のようにもっと積極的にスイクンと向かいあってみるか‥。」
「僕ももっと積極的にナマエちゃんと向き「このまま出発しては行けない気もするが‥私はスイクンを追わなくては。ではナマエ、気をつけてくれよ。またどこかで会おう!」


ミナキさんが去って行った瞬間、マツバさんは私に微笑みかけてくれたので私も微笑みを返す。


「ナマエちゃんは笑った顔も可愛いね。」
「えっ!?いや、そんな‥!」
「あっ、いけない!これ以上ジムを空ける訳にもいかないから僕は先にジムに戻るね。ナマエちゃん‥待ってるよ。」


マツバさんも急ぎ足で去っていく。やばい、ドキドキするよ、マツバさん。



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