ヒワダ→コガネ1



次の日、私は疲れていたのか午後2時まで眠っていた。今日中にウバメの森という森を抜けるという目標がぐっと遠ざかる。いつもより手短に仕度をして、ポケセンを飛び出した。夜森に迷うなんてまっぴら御免だ。
森に出るゲートまでランニングシューズでスイスイ。やっと着くって所でゲートのドアが開いて、予想外の人物が出てきた。確か「俺に近付くな」と言われたはず。なのにその人物、シルバーくんは目線を真っ直ぐ私に向けて近付いてくる。


「聞きたい事がある。」
「あ、私?だよね‥何?」
「ロケット団が復活してるって本当か?」
「うん、本当だよ。でも、私でも倒せたからそんなに強い人じゃないと思うよ。」
「何!?お前が倒しただって?ウソ言うなよな。それが本当だというなら‥その実力俺に見せてみろ!」


シルバーくんはモンスターボールを握る。


「ま、待って!勝負は森を出てからじゃ駄目かな?明るいうちに抜けたいんだけど‥。」
「そんなの待ってる余裕は俺にはない!」


シルバーくんは何かいつもと様子が違かった。いつもは発言はキツイが冷静なのだが、今のシルバーくんは何だかとても動揺している様で荒々しい。しょうがない、頑張って!ベイリーフ!



シルバーくんは新しい仲間らしいゴースとズバット、そしてヒノアラシが進化したのだろうマグマラシをくりだした。勝負は何とか私の勝ちで終ったが、どのポケモンもなかなか強かった。


「何だお前少しは自信をつけてきたのか。フン、使えないやつらだぜ。いいか?お前が勝てたのは俺のポケモンが弱いからだ!」
「‥何でそんな事言うの?シルバーくんのポケモンは、とっても強かった。愛情を持って育てなきゃ、ポケモンはなかなか強くなる意思を持ってくれないって、ウツギ博士が言ってた。だから、シルバーくんは本当は‥!」
「‥‥‥‥‥。俺は弱いやつが大嫌いなんだ。ポケモンだろうがトレーナーだろうが‥そうゆう弱い奴らがうろついてるのが目障りで仕方ない。ロケット団も同じ、一人一人は弱いくせに集まって威張り散らして偉くなったつもりでいる。そんな奴らが許せないんだ。」
「‥シルバーくん、もしかしてロケット団に特別悪い思い出でもあるの?」
「‥っ!」

私か、そう聞くとシルバーくんは明らかに動揺し始めた。


「私、出来る事ならシルバーくんの力になりたいよ。もちろん、私もロケット団は許せないし。だから‥」
「お前はうろちょろするな!俺の邪魔をするなら、ついでにお前も痛い目にあわせてやるからな‥!」


シルバーくんはウバメの森の方へ走って行った。
シルバーくん、一体何があったんだろう。シルバーくんは明らかにロケット団を嫌っている。でもロケット団みたいにポケモンを道具とか言ったりして、でもポケモンには愛情を確かに持っていて‥はぁ、何を考えてるか分からないよ。
私は複雑な気持ちを抱えながらウバメの森へ入った。

ウバメの森へ入ると、男の人にカモネギを2匹捕まえるのを手伝って欲しいと言われた。暗くなる前にどうしても抜けたいのに、その人の困りに困りきった顔を見ると断りきれなくて2匹とも捕まえた時にはもう夕日は沈みきっていた。ああ、疲れたし、絶望以外のなにものでもない。


「ありがとうございます!お詫びに、ひでんマシンのいあいぎりをあげるよ!」
「いえいえ、ありがとうございます!」


男の人に別れを告げ、私はすぐにベイリーフにいあいぎりを覚えさせた。人助けをしたらいい事が返ってくるってママが言ってたっけ。本当にそうだけど今回の場合はプラマイゼロ。こんな真っ暗の中一人で森をさ迷うなんて冗談じゃない。
もっと外の環境に慣れて欲しくてトゲピーを先頭に歩く。だが、失敗だった。野生ポケモンが出てきて私が逃げよう!って言っても、バトル好きらしいトゲピーは戦闘体制に入る。だからなかなか進めないわ道には迷うわで、ついに日付は変わってしまった。
暗いし寒いし何より怖い。今にも幽霊が出てきそうだ。歩く体力も残ってない。残ってても怖くて進めないけどね。私はその場に座りこんだ。


「おい‥!」


声が聞こえて顔をあげると驚きの人物、シルバーくんが居た。


「シルバーくん!何でここに!?」
「‥お前、暗くなる前に抜けたいとか言ってたろ?出れなくて何かあって俺のせいにされるのは御免だからな。」
「シルバーくんっ、ぅう、ありがとう〜!」


今、誰かが隣に居てくれるだけで嬉しくて堪らない状態なのに、シルバーくんが私を探しに来てくれたと思うと嬉しくて嬉しくて思わずシルバーくんを抱き着いた。


「お、おまっ!何やってんだ、っ離せ!」


我に返って腕を解くと、シルバーくんは顔を真っ赤にさせていた。そんなに怒らせちゃったんだ。


「ごめん!嬉しくて、つい。」
「はぁ、‥!とにかく道案内するから、出るぞ。」
「私、もう歩けないよ。」
「何?歩けないだと!?お前、こんなところで寝る気か?」
「やだけど、歩けないんだもん。」
「あー!めんどくせえな。」


シルバーくんは私から1メートル位空けて隣に座った。


「シルバーくん、ここに居てくれるの?」
「こんな森に女一人にしたら危ないだろ!?‥あ!」
「心配、してくれてるんだ。」
「別にッ!お前の事心配してるんじゃないぞ!?俺の心配をしてるんだ!俺のせいにされたら、困るからな‥。」
「そう。シルバーくん、前から思ってたんだけど、私はお前じゃなくてナマエだよ?」
「だから何だ。」
「だから、ちゃんと名前で呼んでくれない?」
「あぁ‥お前こそ、くんっての付けんのやめろよ。」
「そう?じゃ、私の名前ちゃんと呼んでくれたらいいよ。」
「っ‥ナマエ、でいいのか‥?」
「うん、ありがとうシルバー。」


私はニッコリ微笑むとシルバーはまた顔を赤くした。その瞬間、二人の間に冷たい風が吹いて思わず身震いすると、視界に紺色のジャケットが写った。


「え?」
「使え。」
「でも‥」
「いいから使え、寒いんだろ?」
「でも、シルバー半袖じゃん!風邪引いちゃうよ!」
「俺は、これくらい平気だ!」


私はジャケットを優しく押し返した。


「平気じゃない!ジャケットはいいから、もっとこっちに来てくれない?」
「は?!」
「くっついてた方が、暖かいでしょ?」
「お前、何言ってんだ‥!」
「嫌ならいいけどー。」
「あーもう!じゃぁお前がこっちくればいいだろ?くれば!」
「あ、そっか!」


私はシルバーに触れるか触れないかのとこまで近付いた。


「やっぱりこうしてた方が、あったかいね?」
「っ、分かったからもう寝ろ!」
「うん、シルバー今日はありがと、お休み。」


私は間もなくスヤスヤ眠りに落ちていった。











何でこんな事になったんだ。俺より何故か強くて、俺の事を変に構ってきて、俺の認めたくない図星を付くきにくわないはずの奴が俺の肩に頭を乗せてスヤスヤ眠っている。ナマエは俺にとってあまりにも都合の悪い奴だ。なのに、この状況が何故か悪くない。むしろ、良いってゆうか‥。ふと右下を見る。コイツ、睫毛長いな。それに寝顔も、可愛い。っ!ああ、俺何考えてるんだ!何で、いつから俺はこんな奴にいちいちドキドキするようになったんだ。そんな事を考えながら、俺も眠りに落ちていった。




[ 22/39 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -