学パロ▼課題


夏本番も過ぎた頃。
蝉の声も今はあまり聞こえない。
少年たちの夏休みも終わりを迎えようとしていた。
やはり最初は余裕があるものだ。
まだまだ休みがあるからという理由で。
しかし、あと数日で終了となれば苦戦するものがあるのだ。


「…………」
「エレン、手が止まってるよ」


ベルトルトは目の前でふてくされた顔をしたエレンに言った。
珍しくエレンから会わないか、という連絡があった。
もちろん断る事もせず自宅へ呼んだのだが。
こういう理由か。
エレンの荷物の中は、手をつけていない課題だらけだった。
あれだけ早くに終わらせたほうが良いと、念を押していたのに。
すらすらと赤色のペンで採点をしていく。
つくづく、自分はエレンに甘いと思った。
手伝ってくれ、と言われては断れない。
しかしエレン以外ならば、こんな事にはならないのだ。
採点が終わった課題の束をエレンに渡す。
良いか悪いか。
どちらとも言えない出来だったので、あえて何も言わなかった。
次の採点をしようと思ったが、その課題はまだエレンの前に白紙で置いてあった。
エレンは課題を睨み付けて言った。


「分からない、終わらない、進まない」
「エレンが悪いよ」
「量が多い!」
「休みが多いぶん、課題も多いんだから」
「うー…」


エレンは唸りながら机に突っ伏した。
まだ始めて一時間半程度なのだが。
「休憩しようか」と言った途端、エレンの表情がぱあっと明るくなった。
苦笑いをしつつも可愛いなと感じた。
ベルトルトは立ち上がり、リビングへと向かった。
恋人が家に来ているというのに、触れられないなんて。
エレンは、ムードにならないときに触れあうのを嫌がる。
何かをしているとき、見ているとき。
こちらの欲についても考えてほしい。


「紅茶でいい?」
「うん」
「砂糖は何個?」
「三個がいい」
「そんなに甘くするの?」
「疲れた」
「ああ、はいはい」


作った紅茶をエレンに渡し、そのまま横に座った。
今日中に終わるのか。
まだまだある課題を見て思った。
この調子だと、7割くらいしか終われない気がすると計算した。
ごたごたと考えると、エレンがくいっとベルトルトの服を引っ張った。


「どうしたの?」
「なんかやることないか?」
「え、課題だよ」
「じゃ、なくて、手伝ってもらったお礼に、なんか」
「いいよいいよ」
「だめ、俺がよくないんだよ」


こういう所だけは本当に律儀だと思う。
しかし、いきなりそう言われても思い付かない。
そういうのは情事中に言ってほしい。
少し悩んだ果てに思い付いたことが一つあった。
エレンはじっとベルトルトを見つめ待っていた。
飲んでいた紅茶をテーブルの上に置き、エレンの耳元で言った。


「課題一つ終わるごとにエレンからキスして」


硬直したエレンの顔はみるみる赤くなっていく。
ベルトルトも内心、気恥ずかしいことを口走ったなと思った。
しかし案外良い考えだったのかもしれない。
なかなか言葉を発せずエレン、と呼ぶと即答で無理だ、と返ってきた。
赤くなりながらもごもごと恥ずかしい、やら自分からなんて、やら呟いている。


「エレンから言ってきたんじゃないか」
「なっ、だ、だってそんな事いうと思わなくて…!」
「お礼、しなくちゃいけないんだよね?」
「さっきはいいって言ったくせに!」
「往生際が悪いなあ、それとこれとは別だよ」


ベルトルトがああ言えばエレンはこう言う。
そんな感じでお互い引き下がらない。
拉致があかないな、と思ったのはベルトルトが先だった。
反抗するエレンの腕を引っ張っり、自分の胸の中で抱き締めた。
ぴたり、と大人しくなったエレンがぼそりと言った。


「こ、交代でなら」
「交代?」
「俺からだけじゃなくて、ベルトルトからも…」
「…ははっ」
「な、なんだよ」
「いや、うん、そうだね、そうしよう」


こちらからキスすると、その先までしそうだな。
そう思ったのはエレンには秘密だ。
今までで終わった課題の数は三つ。
そう告げると、エレンは戸惑いがちにキスをしてきた。
軽く触れるだけのキスだった。
今度はベルトルトが深い口付けをした。
そのあとにまたエレンが軽いキス。


「エレンはいつも軽いキスだね」
「それが普通だろ」
「あと二つ、早く終わらそうか」
「…うん」


そのあとの課題が終わるスピードは、言わなくても分かるだろう。




そういや私、休みが終わる前の三日間で課題終わらせてました。
ベルエレはなんだか雰囲気が掴めない!
甘いより大人な感じの方が合うのかな?
ちなみにベルトルトは一人暮らしな設定。



130827




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