特等席






▼学パロ



「可愛いなあ…」


放課後のLHRのとき、そう、左隣の席からぽそりと聞こえた。
ベルトルトは、発言者の方に苦い顔を向ける。
奇遇にも、先ほどクラスで席替えをしたら、エレンと隣になった。
窓際の一番後ろ、エレンの右隣は窓で左隣はベルトルト。
素直に嬉しい。
恋人と隣っていうのを少しは願っていたからだ。
しかし、だ。


「エレン、エレン」
「ん?あ、ごめん、ベルトルトどうした?」


なぜかエレンは上の空なのである。
これで三回目だ。
「可愛い」だの「撫でたい」だの独り言のようにエレンは呟く。
ベルトルトはそれをスルー出来るほど、爽やかな脳などなかった。
さっきからなんなんだ。
聞こうにも聞けない。
予想が一つだけある。
可愛い、などからしたら多分女子のことを言ってるのではないか。
いや、まさか。
だって自分がいるのに。
そう言い聞かせつつも、なかなか勇気がでない。
だがエレンを疑うのもどうかしているな。
そう思い、何気なく聞いてみた。


「あー、のさ、さっきからどうしたの?」
「ん?ああ、あれ」


エレンが指差したのはベルトルトの右列の後ろから三番目にいる女子。
ベルトルトは予想が当たっていたのかと、顔がひきつってしまう。
それに気づいたエレンが、ふはっと笑った。


「ははっ、あの女子じゃねえよ、あれあれ、あの筆箱についてるやつ」


もう一度見てみると、彼女が座っている席の机のすみに筆箱があった。
端に置かれていて、こちらからだと、とても見やすい。
しかし、あれがどうしたというのか。
いまだよく分かっていないベルトルトに、エレンは「キーホルダー」とだけ答えた。


「……犬?」
「の、キーホルダーな」
「あれのこと?」
「そ、可愛いだろ?」


筆箱についてあったのは、手のりサイズくらいの犬のキーホルダー。
見た目だけでもわかる、もふもふ感がある。
ああ、なるほど。
ほっと緊張の糸が解け、肩をおろした。
エレンはベルトルトをじっと見て、にっと笑ってこう言った。


「妬いた?」
「……まあ、ね」
「く、ははっ」
「ちょっとエレン」
「悪い悪い、ふ、」


まったく。
エレンは腹の虫でも壊れたか、くすくすと笑う。
確かに、妬いたのは事実だけれど。
それも生き物ですらないキーホルダーに。
しかし最初からキーホルダーだと分かっていれば妬いてなどは、ない。
ベルトルトは、いまだ笑っているエレンに、一ついたずらを思い付いた。
ころん、とわざとエレンの方に消しゴムを落とした。
とろうとしたエレンの隙をつき、キスをした。
はたからみれば、消しゴムを拾おうとした二人、に見えるだろう。


「ははっ、エレン、顔真っ赤だよ」
「お、まっ、誰かに見らられたら…!」
「一番後ろの席だし、大丈夫だよ」
「そ、そういう問題じゃねえよっ…」
「可愛いね、エレン」
「…っるさい」


ベルトルトは、耳まで真っ赤になるエレンを見て、再度可愛いなと思った。
キーホルダーなんかよりも、ずっとずっと。
ベルトルトが満足そうな顔をして、それを見たエレンも行動に出た。
開けてあったベルトルトのノートに端に、乱暴に「スキ」と書いた。


「…エレン」
「な、なんだよ」
「書いた君が一番恥ずかしがってどうするの」
「あーもう!ばか!」
「えー、あははっ、なんで怒るのさ?」
「なんでもねえよ!」
「本当、可愛いんだから」


なんとも愛しい君の隣は、やはり自分でありたい。




初ベルエレでした!
ベルエレはほのぼのしてるのがいい。
学パロ楽しいっ!



130818
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