曖昧な告白






「今日ね、好きな子に告白するらしいよ、リヴァイ」


なんて話をハンジさんから聞いたのは、ついさっきの事だった。
リヴァイの部屋を掃除しながら先程のハンジの言葉が何度も蘇る。
エレンは誰に告白するのか、というより誰かに告白してしまうのか、と思うほうが大きかった。
片想いなんてするべきじゃなかった、と今更後悔してしまう。
ぱたぱたと掃除をこなしふと椅子に掛けてあったリヴァイのジャケットに目がいった。


「誰かに、告白しちゃうんですね…」


ジャケットをきゅっと握りながら目を瞑った。
兵長だったら、きっと誰も告白を断ったりなんかしないだろうな。
こんな時だけ、いっそ女に生まれていたかったなんて考えてしまう俺はどうかしてるのか。
エレンは頭の中でぐるぐると自問自答を繰り返す。


「……おい」
「うわあっ!?」


背後からの声に思わず声を上げてしまった。
振り返ると今まさに考えていた人物がいた。
エレンは焦りながらばっと立ち上がった。
相変わらずの顔面だが、エレンにとっては今リヴァイと顔を合わすとなんだか切なくなる。


「あ、あの、すいません、掃除終わりました」
「…なんだ、それ」
「え、それ?」
「お前の右手」


指摘されて、自分の右手を見るとジャケットをぎゅっと握っていた。
エレンの背中から冷や汗が次々と出てくる。
やばい、兵長って潔癖症だった。
慌ててぱっと離したが、握っていた所に既にしわがついてしまっていた。


「い、今すぐアイロンかけてきますっ!」
「いい、置いとけ」
「え、や、でも…」
「なんだ」
「な、なんでもないです」
「なら従え」


少しの沈黙が続く。
リヴァイはスカーフを外し椅子に座った。
これは出ていくべきなのだろうか。
というより、いても意味ないだろう。
エレンはジャケットを綺麗に畳んでベッドに置いた。
お幸せに、なんて思えるはずもないが、せめてリヴァイが悲しまないようにと、リヴァイの好きな相手に願った。
失礼しました、と言ってその場を去ろうとした、


「おい、エレン」
「はい?」
「何処へ行くんだ、まだ掃除が合格だとは誰も言っていないが」
「あ、すいませ…」
「チェックはペトラに見てもらえ。俺は一端クソメガネのとこに行く
「分かりました」
「それと、」


がた、と椅子から立ち上がりエレンが畳んだジャケットを手にとった。


「掃除が合格だとしても、ここにいとけ」
「え、なんでですか?」
「お前に話がある」
「話、ってどんな…」
「さあな」


去っていこうとするリヴァイに、胸が焦がれて、エレンは頭で考えるより先に口が動いてしまっていた。


「告白、するんですか」


リヴァイが振り向き、じっとエレンを見る。
はっとして、なんでもないです、と言ってから自分をぶん殴りたくなった。


「エレン」
「は、はい…」
「俺の好きな奴は小柄だが俺より背が高い」
「え、はい…?」
「俺としゃべるときはいつも敬語だ」
「はあ…」
「目は金色」
「…え、」
「巨人を一匹残らず駆逐するのが夢だとよ」
「っ…あの、」


エレンが何かを言う前にリヴァイは薄く笑い行ってしまった。
兵長、それってどういう意味なんですか。
期待しちゃいますよ。
いろんな疑問が渦巻いて、上手く考えがまとまらない頭で、一つだけ思えることは、


「…兵長、曖昧すぎて伝わんないですよ…」


帰ってくるまでに、この顔なんとかしなくちゃな。




title/Poison×Apple



130715
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