子供じゃないです






やってしまった。
やばい。かなりやばい。何がって俺の命がやばい。
だって兵長があんなこと言うから。
いやでも、俺もさすがにあれはないだろ。
エレンは地下室のベッドの上で膝を抱えて小さくなる。
ぐるぐると先程の会話が頭の中で回っている。
嫌われた、そうエレンは思った。
二十分程前に、エレンは食堂で昼食を食べていた。
昼食といっても、もう昼はとっくに過ぎているのだが。
ペトラに頼まれた掃除の範囲が広すぎて、時間を食ってしまったのだ。
一人寂しく食べるのは、なんだか心細い気もした。
最近はミカサやアルミンにも会ってないな。
食べる手を止め、エレンは俯いて一つため息をついた。


「おい、食事中にため息をつくな。飯が不味くなる」
「すいませ…え、…うわああっ!?」


顔を上げると、そこには人類最強と言われる人物がいた。
一人だと思っていたエレンは思わず声を上げてしまい、そのあとすかさず口に手をあてた。
リヴァイの目がいかにも黙れ、と語っていたからだ。


「…あ、あの、兵長、いつからいたんですか…」
「さっきだ」
「そう、ですか…」


もくもくと食べるリヴァイを見て、エレンも少し気まずそうにまた食べ初めた。
なんだか兵長に会うのも久しぶりだな。
とたんにエレンの心臓が音を立てる。
別に今さら二人きりになったからといって、恥ずかしがる必要もないのだが、やはりエレンにとってはまだまだ精一杯なのだ。
キス、したいな。
エレンは無意識にそう思ってしまい、一気に顔を耳まで赤くした。


「…おいエレン、なんだ、その顔は」
「う、あの…すいません…」
「答えになっていないが」
「っ…」
「エレン、こっちに来い」


じっとエレンを見るリヴァイの目にどんどん吸い込まれそうになる。
足が震えて前に進めない。
というより、言うべきなのだろうか。
いや、それはそれで引かれたらどうすればいいんだ。
どんどん熱くなっていく顔を隠そうにも、もう耳までそうなってしまっては、隠しようもない。
エレンはもどかしい自分が嫌になり、意を決してリヴァイの側に行こうとした。


「やっほーっ!!リヴァイいるかーい?」


ばんっと勢いよく開いたドアによってエレンの足は止まってしまった。
それと同時にドアを開けた張本人の顔面にリヴァイが蹴りをいれようとした。
間一髪で避けたが、すかさず今度は背中に蹴りをいれられ、さすがにこれは避け切れなかった。


「いったあっ!!ちょっとリヴァイ!?」
「おいクソメガネ、自分で削ぐか俺に削がれるか、顔面に蹴りか選べ」
「え、リヴァイ?いや、ちょちょ、なに!?」
「あ、あのハンジさん!俺に何か用ですか?」


このままでは次こそハンジの顔面に蹴りがいれられるかもしれないと思い、エレンは焦りながらハンジに聞いた。
ハンジは蹴られた背中、というより腰付近をさすりながら立ち上がった。


「ちょっとね、エルヴィン団長が話があるそうなの」
「え、エルヴィン団長が俺に、ですか…?」
「内容は私は聞いてないし、とりあえず一緒に来てほしいんだけど」
「なら俺が行く」
「へ、兵長…!?」


黙って聞いていたリヴァイがやった口を開いた。
かと思いきや、予想もしてなかった発言が出てきたのだ。
リヴァイが今、不機嫌だからやけくそになっているのか、エルヴィンに愚痴でも言うつもりなのか、とにかくなぜリヴァイが自分が行くという発言をしたのかがエレンには分からなかった。


「なに言ってんの!エレンを連れて来いって…」
「こいつは俺の部下だ。俺を先に通すのが当たり前だろう」
「あのねえ、リヴァイ…」
「っ…、リヴァイ兵長、俺が行きます」


少しだけリヴァイの目が見開いたように見えたのは気のせいではないだろう。
エレンはなんとかリヴァイと目をそらさないように、じっとリヴァイを見つめた。


「あいつだったら、そうやって素直に行くんだな」
「え、…?」
「どうせお前は淫乱だってことだ」
「なっ…!?」


リヴァイの言葉にかっとエレンの顔が赤くなる。
だが先程のような熱は持っていなかった。
リヴァイはなんとも冷たい目をエレンに向けていた。


「どういう、意味ですか…」
「エルヴィンにでも聞け、クソガキが」
「…んなの、」
「あ?」
「っそんなの、いきなり意味わかんねえよ!兵長のばか!あほ!ちび!」


息もつかずに一気に言いたいことを言って、エレンはいてもたってもいられなくなり走ってその場を去っていった。
残されたリヴァイとハンジ。
ハンジはエレンが去っていった方向を見ながら、少しの沈黙を置いて言った。


「まあ、あれはリヴァイが悪いんじゃない?」
「…黙れ」
「エルヴィン団長には私から適当に言っとくから、ちゃんとエレンのとこ行ったげなよ」


人類最強といえど、やはり中身は普通の人間。
そりゃあ、嫉妬くらいはしちゃうもんか。
ハンジは苦笑いをして、その場を後にした。




リヴァイが嫉妬しちゃうお話的な感じです。
続きます。



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