世界が終わって始まった






その時起こってほしくない事はたいてい起こる。
例えば予測していた最悪の事態とか。
猫は死ぬ何日か前に一人で旅に出る。
ということは死ぬ余命が解っているのだろう。
だから飼い主から離れていくに違いない。
なんだか今ならその気持ちか解る気がする。
どうせなら一人虚しく死んでいきたい。
誰かを悲しませないように、泣かせないように。
誰にも見つからない所で、ひっそりと。
そしたら残るのは骨だけなんだろうな。
誰のか分からないくらいに年月がたったら見つけてほしい。
そこで初めて成仏して、眠りにつける。
死んだら天国か。
いや、地獄行きかもしれない。
そもそも、天国も地獄もあるのだろうか。
どうせなら彼が死ぬまでは霊でもいい。
なんて言ったらかなり怒られるだろうな。
ああ、痛い。
もう再生もしなくなったこの体はただの殻。
あまりにも速い攻撃に構成する余裕がなかった。
いろんな声が聞こえる。
罵声や悲鳴が混ざり込んで聞こえてくる。
どうか少しでも多くの人間が死にませんように。
これから死ぬ人間の願いなど叶わない気がするが。
ふと聞こえた彼の声。
何かを叫んでいる。
どうしたのだろうか。
もしや彼が危ない状態になっているのか。
何を考えているんだ、彼はとても強い。
人類最強なのだから。
だんだんと近くなってくる。
朦朧とする意識の中で懸命に言葉を聞き取る。
名前、だ。
何度も何度も呼んでくれていたのか。
自分の名を。
返事をしたくてたまらないのに、声が出ない。
そういえば左足はもうないんだった。
彼の隣に立って、歩くことも出来ない。
右腕も感覚がなくなってきている。
もう骨も何もかもが砕けているのだろう。
もう彼にお茶をくむことが出来ない。
美味しい、と。
言ってくれていたのに。
なんだか急に周りが静かになっていく。
巨人を全滅させたのか。
ぼんやりとする景色には確かに巨大な影がない。
一体どれだけの人類が生き残れたのだろうか。
もう少し、役に立てれば良かったのに。
けほ、と咳をするとどろりと出てきた赤い水。
最後に彼の顔が見たい。
ばたばたと慌ただしい足音が聞こえてくる。


「エレンっっ!!!」
「リヴァイっ!!早くエレンを運んで!!」
「ハンジ!絶対にエレンを死なすな!なんとしてでも生かせ!」
「わかってる!!」


まだ感覚のある左手に暖かい体温を感じた。
兵長、そんなに強く握らないでください。
痛いですよ。
口から出ようとする言葉は、喉でつまる。
ぽたぽたと手の甲に何か落ちてくる。
泣いてるんですか。
大丈夫。
ちゃんとここにいます。
もどかしい口パクでなんとか伝えた。
彼に伝わったか。
よく分からない。
ただ、握る力がさらに強まったのだけ分かった。


「エレン、帰ろう」
「寒いだろう」
「帰ったら俺が茶を淹れてやるからな」
「大丈夫だエレン、絶対に死なせない、必ずだ」


前言撤回をしよう。
彼が死ぬまでは。
絶対に死ねない。
一人でなんて死なない。





とてもいい匂いがする。
とても心地の良い地面。
だが地面というには固くない、ではなんだろう。
痛いところもない。
死んでしまったのか。
ゆっくりと目を開けるとまぶしい光が差し込んだ。


「おはよう、エレン」




死んでないない!!
死んでないですよ!
最後一命とりとめたエレンにリヴァイが最後の一言。
こういう意味解らない文が好きです。
前説が長すぎた。



131106


prev  next



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -