私が泣くのはすごく珍しいことで、年に一回やるかないかのことだった。犬とか動物の映画を見るとすぐ泣くけど、見ないようにしてる。それにそういう涙じゃなくて、自分のことに関して泣くなんて、めったにあることじゃなかった。
故にスクアーロは動揺している。
「ゔぉ゙おい、泣くなぁ…」
「、るさいっ、泣いて な「くねぇだろぉお!なんで泣いてんだぁ!」
スクアーロにそう言われてよく考えてみたら私なんで泣いてるんだろう。私が辛くなったのはたぶんクラス替えが原因である。私はいま現在花も恥じらう高校二年生(しかもなりたて)で、去年仲良くしていたメンバーとは別のクラスになって、私はとても悲しいのだ。
「だって、私だけ、ひとりっぼちなん、だもっ…ん!」
「新しい友達作ればいいだろぉ。」
「そうやって簡単に言うけどねぇ!私は前のクラス大好きだったのっ引きずってるの!」
「そんなこと言われてもなぁ、俺は学校には行ってやれねぇ。お前でなんとかするしかねぇぞぉ。」
「…っ、知ってる。」
「じゃあ泣きやめぇ。」
「無理、なんか苦しい。寂しい、辛い。」
ひくひくと泣きながら鼻を啜る。スクアーロは困ったように頬をかいて、しばらく考えて「行くぞぉ」と私の手を取った。私はというとスクアーロが差し出したティッシュで鼻水をかんで急いでカーディガンを羽織った。四月と言ってもまだまだ夜は肌寒い。
「ど、どこ行くの?」
「コンビニ。」
「えぇ!?」
引っ張られながら走る。スクアーロは足が長いから普通に歩いても私よりかなり早い。スクアーロは宣言通りにコンビニによって早々にカップ酒と炭酸飲料を買ってまた夜道を歩きはじめた。
「ね、どうしたの?急に。」
「女は好きだろぉ、こういうの。」
スクアーロが足を止めた。指差す方向には暗闇に佇む枝垂れ桜と道を囲むように植えられた淡い桜色。
「う、わぁ…すごい…!」
「飲め。」
「ん、ありがとう。」
スクアーロは橋に寄り掛かって先程買ったカップ酒を開けて飲んだ。似合わねぇーと思って隣のスクアーロを見ると意外と様になっていて、イケメンはずるいなぁとしみじみ思った。
スクアーロがくれたグレープ味の炭酸飲料を飲んでもう一度桜を見た。桜という花は不思議なもので、最初見た時はすごくきれいなのに、ずっと見てると不気味になる。夜桜ということもあり、若干怖くなった私はスクアーロの手の甲に自分のを当てて、人差し指を彼のそれに絡めた。
「なんだぁ?」
「別に。きれいだなぁって。」
「もう元気になったのかぁ?」
「そうじゃないけど、でもまぁ…ちょっとは。」
スクアーロ、手を繋いでると飲みにくいかな。ちょっと遠慮がちに手を離そうとすると、それを拒むように、スクアーロが私の手を握った。
「…っふ。」
「んだよ。」
「かわいい所あるね、スクアーロ。」
「ううるせぇ!」
未練がましい指先
離したくないってそう思ったんでしょ?
淡く蕩ける様へ提出
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