四月というのは私にとって非常に辛い季節である。冬の間待ち焦がれた桜の花吹雪も鬱陶しく思う程だ。なぜかといえば、私が環境の変化に弱いというただそれだけの話である。別れと出会いの季節だなんて言うが、私には別れの寂しさしか感じられなかったりする。出会いの喜びなんて言ってもまだ喜べる程仲良くなんてなれていないし、その出会いに喜ぶ頃にはもう次の別れが迫っている。
「つまり私は新学期が嫌いなのだよ。」
「だからこんなとこでサボってんのかぁ?学級委員のくせによぉ。」
「いいじゃん別に。てかあんたも学級委員でしょ!」
私を覗き込んだのは短い銀髪で、見飽きたと言っていいほど長い付き合いのやつだ。私のクラス運の無さを間近で見てきた一人である。私は便宜上では人見知りはしないし、誰とでも仲良くできるように見えるらしく、数少ない本当に心を開いた友人とは大抵クラスを別けられた。なぜかこのスクアーロだけはずっと同じクラスだが。
「もう仲良さそうなやつ出来てたじゃねぇか。」
「上辺だけのねー。私は本当は狭く深くの付き合いが好きなの。」
「知ってるぞぉ。だから俺は深く付き合ってるじゃねぇかぁ。」
「なんかやらしー。」
「やらしい捉え方するお前がやらしいんだぁ!」
「うっせ白髪!」
「んだとぉ!?」
ぐしゃぐしゃとスクアーロの髪を撫で回す。無性に寂しいこの腕は、何かに触れてないと自分の腕かも分からない。
「おい…」
「ん?」
「俺はお前のこと好きだぜぇ。」
「…は、」
頭を撫でていた手を掴まれた。静まりかえった屋上は少し生温い風を受けては私の髪をなびかせた。
「髪、邪魔だなぁ。」
「スク、…」
近づく顔に反射的に目を瞑るとがつんと痛みがおでこを刺した。
「…え、?」
「やらしいこと期待したんだろぉ!」
「ばっ、し、してないわよバカ!カス!」
「カスはてめぇだぁ!」
「てゆーかなんででこぴん!?なんででこぴんしたの!?」
「お前がやらしいこと想像したからだぁ!」
「してないし、さっきからやらしいやらしいうるさいのよ、ハレンチ!」
回し蹴りをスクアーロのお尻に一発。ふいにくらったせいか運動神経のいいはずの奴が転んでく。スクアーロが私を巻き込むために腕を伸ばした。本来私はその腕を振り払うべきなのに、どうしてか出来なくてそのまま二人で倒れ込んだ。スローモーションで動く背景がスクアーロの慈しむような笑顔を最後にようやく止まった。
「なに、その顔…」
「お前が寂しそうな顔してんのがつれぇ。」
「…してないよ、そんな顔。」
「してんだろぉが。」
「ス、ク…」
もう騙されない、と近づく顔に怯まず、目を開けていた。スクアーロは気にせず瞳を閉じて私のそれを塞いだ。
「…………」
「…笑ってて欲しいんだぁ。」
「あんたが傍にいないと、笑えないもん。」
「なら、いてやる。」
嬉しそうな顔して私のことぎゅってするから、スクアーロのドキドキした心臓と私のドキドキした心臓が重なって、私も嬉しい顔をしてしまった。
生徒たちの4時すぎ
「今年のクラス替え、やっぱラッキーだったのかな。」
「当たり前だろぉ、俺と同じクラスなんだぜぇ?」
君がいるなら明日も学校に来たいと思う。
実はクラス一緒になるのは初めてな二人。
うらら様へ提出
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