一人また一人と倒れていく。私たちの背後に回った二人を口火に狩りが始まった。狩るか狩られるか、いつだってその二択。選ぶのはいつも「狩る」。
思っていたより人数が多い。無線からスクアーロの声がして上は始末したと分かった。
「はあっ…意外と多いですね。」
「大した数じゃねぇ。」
「ザンザスさんがもっと仕事してくれれば、楽になるんですけど、ね!」
「ふん、てめぇが頑張りやがれ。」
こっ、この男…!
ザンザスさんを睨みつけると、ふっと微笑。そのなんとも言えない表情にどうにも恥ずかしくなって目を逸らした。
「大方終わりましたね。」
「あとはカス鮫がどうにかするだろう。」
「そうです、ね!?」
口を塞がれる。さっき触れたナイフがまた首に当てられる。ザンザスさんがバカにしたように笑う。…ザンザスさんのせいなのに。
「甘いわねぇ、私にトドメを刺さないなんて。」
「そんだけ出血しててよくそんな台詞言えますね。」
「うるさい!死ぬ前に、あんたを殺すくらい出来るのよ!」
「どうかな?」
「え…?」
はやい。私にも見えなかった。音がして漸く弾丸が私の頬を掠め、女の顔面を打ち抜いたことに気づいた。ザンザスさんがこうすることは当然分かってはいたが、まさか私ギリギリでしかも女の顔面にぶち込むとは。流石荒くれ集団ヴァリアーのボス。
「あっ、の…私のこと、ちゃんと考えましたかっ…!」
「最近はお前のことばかり考えてる。」
「なっあ、」
「なんだその顔は、殺して興奮したか?」
「そんなわけない、じゃない、です か…っ」
近い、そう言おうとしたそれを彼は簡単に塞いだ。微かに香る血の臭いは私のものか彼のものか、それとも周りの屍か。
絶対周りの屍ですよね。
嫌なんですけど、こんな戦場の中心で唇を貪るなんて。ムードも何もあったもんじゃないんですけど。イタリア人て本来ロマンチストなんじゃないんですか。ていうかそろそろ息が苦しい。
「んっ、んん―!」
「下手くそめ。」
「っはあ、息、出来なっ…」
「好きだ。」
「や、だから、周り、すごい死んで、まっ…んぅ、ふ…」
舌の侵入を許した。悔しい、こんな男に良いようにされるなんて。なんかしら抵抗してやらないとキャバッローネに戻れないわ!
そんな意味不明な思考の間にもザンザスさんはキスを続けていて、調子に乗った彼は私の股の間に足を突っ込んで来た。に、逃げられない。上に何故か足で私のあそこをぐりぐりしてきて、ちょっと、何なのこの人っ…!
「っ…や、んく…ザン、ざ、」
「こんなとこで発情すんな、なまえ。」
「し、してませ、んっ…ん、」
この人キスしすぎ。逃げないようにと握られた手に爪を立てる。これでどうだという目で見てみるが、ザンザスさんは「それが?」と声が聞こえてきそうな目で手を一瞥しただけで、そのあとすぐ唇を離した。
「き、す…しすぎです!」
「好きなんだ。」
「へ!?」
「キスが。」
「あ、そう、ですか。」
「お前のことだと思ったのか?」
「思ってません!!」
勝ち誇ったように笑ってまた近づいてくる。もう苦しいです、もうしないです。
さっきまで触れてた唇が、うすく開かれて近づいて、直前で目が合う。悔しい、目を、閉じてしまうなんて。
「ゔお゙ぉおい!!いつまでイチャイチャしてやがるてめぇらあぁ!」
「ぎゃぁああスクアーロ!?」
「ちっ邪魔しやがって。」
「もう十分楽しんだだろーがぁあ!」
「最後まではいってねぇ。」
「いくつもりだったんですか!?」
「もう任務は終わってんだぁ!さっさと帰るぞぉ!」
111106