星合
真夜中、そろそろ日付が変わろうかという時間。
普段ならばもう眠るか、その準備をしている時刻。
ついに間に合わなかったなと、ぼんやりと頭の中で考えていた。
「どうしたの?」
「…いや、なんでもない」
隣を歩く佐助が不思議そうに首を傾げるが、実際、本当にそれ以上なにも言えることがないのだ。
明日は…というか、もう今日だが…七夕で、せっかくの節目だから祓いでもしようかと思ったのがきっかけ。
しかし生憎、術に必要な石がストックしていた量だけでは足りなかくて、ならば河原にでも拾いに行こうかと思ったのがついさっき。
「石、間に合わなかったね」
ただ結局は河原に着く前に日付が変わり、好ましい時間に術を実行することはできなくなってしまったけれども。
「間に合わなかったな」
そういう訳で冒頭の考えに戻るわけだが、正直なところあまり焦ってはいない。
何しろ六月三十日に大祓をしたばかりで、大した禍など残ってはいないのだ。
今回の祓いなんて、してもしなくても大した変わりはないのだから。
「せっかく拾いに出たのにね」
悪いと一言謝れば、嫌味ではないのだと佐助が笑う。
「大輔ちゃん明日も朝早いんでしょ?」
「…まぁ、それなりに」
「もう帰る?」
寝た方が良いのではないかと、佐助はそう言って気を遣ってくれるものの。
下から覗き込んでくる佐助を見返すと、なんとも言えない愛しさがじわじわと胸に広がる気がする。
出がけに見つかって、なんとなく一緒に来たが、そういえば、最近は滅多にこういう時間を持てていなかったと気付く。
まぁ、いつもは周りがもっと騒がしいというのもあるが。
「………大輔ちゃん?」
そう思ったら、なんとなく勿体ない気がして、とりあえず近くにあった手を取った。
「俺は…まだ帰りたくないけどな」
「!」
「もう少しこのまま。手繋いで散歩しないか」
久しぶりにとそう言ったら、佐助もにっこり笑って手を握り返してきたから。
たまにはこんな風にのんびりするだけの散歩も悪くないもんだと思い出した。
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