101号室





『………佐助?』


二人暮らしには広すぎる3LDK。玄関からいつも通りリビングに向かえば、目の前には山ほどの野菜。

何事かとそのまま佐助の待つ台所に直行して…さらにおどろいた。


テーブル一面に広がる、黄色・黄色・黄色…。

一体これは何事なんだ?


「あ!大輔ちゃん!おかえりなさーい」

『どうしたんだ、これ…すごい量だが…』

「え?だって今日、はろうぃんってやつなんでしょ?」


確かに今日はハロウィンだが、これはなんだか世間の行事と違わないか。

一般のハロウィンでもジャックオーランタンは飾るだろうが、食卓をカボチャ料理で埋め尽くしたりはしないだろ。

そう思って、普通のハロウィンについて教えたら。


「…えっ!?うそ!?え…だ、だってかすがが!収穫祭だから野菜だって……」


今日は野菜しか食べない日なのだと言われ、本気でそれを信じたらしい。
あれだけ飾りがあるスーパーにも毎日行っているだろうに、本気で知らなかったのか?

佐助も変なところで素直だからな…。


「せっかく片倉さんに頼んでもらってきたのに…俺様すごい恥ずかしいじゃんっ…」

『これ片倉さんが作ったやつなのか?』

「そうけどさ…もー!片倉さんもなんか言ってくれたら良かったのに!」


道理で立派な野菜だと思った。
恥ずかしそうな佐助には悪いが、野菜好きの俺としては結構嬉しいんだけどな。


『佐助、明日暇か?』

「え…?うん、特に何もないけど…」

『なら、たまには一緒に出掛けないか』


野菜のお礼に、片倉さんに何か菓子でも買いに行かないかと誘ってみる。
ここのところ忙しくてあまり家にも帰れなかったから、俺だってたまには二人で過ごしたい。


「本当!?」

『久しぶりにデートしようぜ』


パッと笑顔になった佐助を見て、たったそれだけの事でにやけそうな俺は、今相当佐助に飢えているらしい。



…やっぱり、口実をくれたかすがにも何かお礼を買って行こう。





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