本気で嫌がりなさい





「さっさと七面鳥の準備をせい」


目の前、ゆったりと脇息にもたれておられるお方がそう仰いました。


……………。


…こ、こえぇぇっ!!!

セリフの内容が意味わからんとか唐突すぎるとか、そんな些細なことには関わらず真面目にチビってしまいそうなくらい真剣に怖いんですけど!
なんでこんな日に限って留守なんですか大輔さん!?おうかがいしたところ、あなたのお客様らしくていらっしゃいましてよ!?

珍しく外から帰ってきたら突然エントランスで捕まり、有無を言わさずエレベーターの前まで案内させられ、どんくさい俺はそのまま何の抵抗もできないままなぜか自分の部屋にご招待させていただくことになっちゃったんですが……ほんとに何故?



初対面なのに当然のように俺をアゴで使うこの織田信長さまは、本当に…ほんっとーっに!怖いですから!
松永さんほど気味悪い感じじゃないけど、もっと直球でめちゃくちゃ怖いんです!

響くような篭るような独特な声も、不機嫌そうな脅すような…じゃなくてえーと…常人には計り知れない深謀遠慮の淵を覗いておられるような表情も、上に立つ方のオーラがバリバリです…。庶民の俺にはその威圧感だけでもう平謝りしたくてしょうがないくらいです(したらさっき睨まれましたけどね!)

まぁ早い話が超絶怖いんですってば。


「英米ではクリスマスにかようなものを食うらしい」


……しかも超マイペースなお方…。
珍しいもの好きなんですね信長さま…。

でも我が家には七面鳥なんてございませんが…というか、日本の家庭ではチキンが精々だと思うのですが…


と、どうしようかと内心オロオロしておりましたら。


にやりと、それはもう王様って言葉がおっそろしく似合うような微笑み(恐い)が。


「貴様に英米を選ばせてやる」


…え?え?…選ぶって…え、何を…?…うぅ…なんでそんなに楽しそうに……まぁとりあえず選びますけど…えーとえー、えー…じゃあ…


『アメリカ…(?)』


「ならば貴様は食うな」


…えぇっ!?なんでっ!?どういう流れ!?


「米国では感謝祭に食すというぞ」


なるほどね!…じゃなくて、だまされた!
そういうことですかい!この意地悪好きさん…!いい笑顔ですねこの野郎!(ウソですすいません調子こきました)

でもだってだって信長さんだって、あんなでかい鳥どうせ全部は食べないのに!
しかも買いに行く(仮)の俺なのに!

せっかくそんな珍しい物買いに行くなら誰だって食べてみたいと思うのが人情ってもんじゃないですかー…


「不満か」


ああでも…ここではいと言う度胸は俺にはないのですよ。文句を言うにはやっぱり恐いんです…目が合うだけで硬直しちゃうよ…

いや別に、睨まれてるわけじゃなさそうなんですけどね…。


『………ケーキはチョコで?』


もう一押し要求する勇気のない俺は、もう諦めて買い出しに行くことにします。
えぇもう、ダッシュで行ってきますよ。



でもクリスマスといえばケーキ。ケーキといえばチョコレート。ここは譲れません。

買ってきた後で目障りだとか言って捨てられたらショックすぎて立ち直れないので、ケーキのためなら小心者でも頑張りますよ俺は。


「…フン、是非もなし」


『(……………へ?)』


「貴様にしてはよう言うたわ」


にやりと、片目だけで笑いかけられ(たような気がし)ました。


「味見を許してやる」


いまだ脇息にもたれたまま、なぜか満足そうにそう仰いました。




……もしかして信長さま、甘党ですか…?



なんか俺……今一瞬、仲良くなれる気がしてしまいました。







(少々、お待ちください。)




信長さんは下戸で甘党、譲れません(どうでもいい)

七面鳥は第一主が買い出し&調理中です。
信長さんはちょうど遊びに来たところでした。

タイミング(運)の悪い第二主(笑)

アンケートへの投函ありがとうございました!





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